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答えがでないまま、次の部活動日になってしまった。
お盆が終わり、八月下旬に突入したので、今日からは本格的に文化祭の準備に入る。
「……どうしよ」
やらなきゃいけないことは山積みなのだが、どうしても一ノ瀬君のことが頭から離れない。電車に揺られながら考え込む。
……それにしても、本当に私のことが好きなのかな。
あんなに真剣な告白だったとわかっていても、疑念が生まれてしまう。それくらい、校内で一番有名と言っても過言ではない、完璧すぎる一ノ瀬君が自分を好きになったとは思えないのだ。
いや、理由は聞いたけれど。
写真に惹かれた、なんて初めて言われた褒め言葉だったので、正直とても嬉しかった。
……それは嬉しかったんだけど。
何分、告白されるのなんて初めてのことだったので、未だに信じられない自分がいた。あの幻想的過ぎる世界で、夢を見たんじゃないかと思うほどには信じられていなかった。
ぐるぐると考えていると、あっという間に学校の正門に到着してしまう。
パンっと自分の両頬を叩いた。
……しっかりしなきゃ。部長なんだから。
部活は部活。そう割り切って、部室へと向かった。
「あ。先輩おはよーございます」
「「おはようございます」」
「おはよう椎名君、鈴原君、倉持君」
今日の一番乗りは、三人組だった。
「先輩、ちょっといいですか」
「どうしたの?」
荷物を机に置いていると、椎名君が難しそうな顔をしていた。
「文化祭、何かおもしれーことしたいなって思ってたんですけど」
「おもしれーことですか」
「はい。写真展がつまんないわけじゃないんですけど、なんか全員でやりたいなって思って」
「おぉ……」
どうやらその意思は椎名君だけのものではなく、鈴原君も倉持君も同じ気持ちのようだった。
「それで、俺達調べてたんすよ。写真でなんかできねぇかなって」
「そうなんだ」
自主的にそこまでしていたという、この事実だけで私の胸は感動で埋め尽くされた。
本当に、皆変わったなぁとしみじみしながら椎名君の話に耳を傾けた。
「それで写真リレーっていうのを見つけて」
「写真リレー……」
「知ってます?」
「ううん、初めて聞いた」
「なんか、一個テーマ決めて皆で順番に写真を撮っていくみたいな。それを並べて映像にするのも面白そうだし、展示するのもいいなって」
椎名君は自分のスマホで、雷の写真リレーを見せてくれた。
「なるほど」
それは純粋に面白そうだなと思った。
「映像もやるなら、田宮先輩と響にお願いしようかなって感じなんですけど」
「面白そうだね。やってみる?」
「やってみたいっす!」
「俺も、できるならやりたいっす」
「面白そうなんで、俺も」
三人の意欲的な姿をみて、もう一度嬉しくなってしまう。
「それじゃ、田宮君と一ノ瀬君が来てから二人の同意が取れたら、どんなものにするか考えてみよう」
「「「はい!」」」
面白いことがしたいというのは、椎名君らしいなと勝手に感じてしまう。他の二人が肯定的なのも、きっとノリがいいと言われる理由なのだろう。
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