好きだと伝えたくて

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「先輩、俺に時間をくれませんか?」  そう近付いた一ノ瀬君の破壊力は凄まじいものだった。 「わ、わかった」  あまりの美の暴力に、驚いてすぐさま頷いてしまった。 「ありがとうございます」  一ノ瀬君の話を受けたので、私達は空き教室に入った。 今日は活動する部活が少ないのか、教室周りはしんとしていた。 「……先輩。俺は本当に先輩が好きです」 「う、うん」  撮影会と同じ、熱のこもった視線を向けられる。 「先輩に……俺の気持ちは全然伝わってないのかなって思って」 「そんなことは……」  咄嗟に否定の言葉が出たものの、事実とは異なる答えだった。 「……うん、ある」 「……正直ですね。そんなところも含めて好きです」 「うっ……ど、どうしても信じれてない自分がいるの」  さらりと好きと言われて動揺をする。胸の前で制服をぎゅっと掴みながら、申し訳なさそうに告げる。 「本当に好かれているのかがわからなくて……好きになってもらうような要素もないし」  真剣な表情に、真剣な態度で答えれば、一ノ瀬君はにこりと微笑んだ。 「それなら説明させてください。先輩には、好きになる要素が……魅力がたくさんあるので」 「そ、そうなの……?」 「はい。写真から惹かれたのは、あくまでもきっかけです。その後、真剣に写真のことを教えてくれた姿も、先輩が部長として頑張っている姿も、俺からすれば尊敬ですし、純粋に惹かれます」  そこまで言われても、あまりピンと来ていなかった。 「……実はあの日、一部始終だけ見てたんです」 「あの日?」 「はい。新井先生から椎名たちを庇った日です」 「えっ‼」  まさかあの光景を見られていたとは。衝撃的過ぎる事実に、目を大きく見開いてしまった。 「すみません。鍵をもらいに行くつもりだったので。……正直俺、先輩はもっと弱々しい人だと思ってたんです。実際、俺に会った時は異様にびくびくしてたので」 「私、そんなにびくびくしてたの……」 「はい」  どうりで舐められるわけだ。しょんぼりと落ち込みながらも、過去の話だと切り替える。 「でもあの日は明確に違いましたよね。正直、先生からあんなに圧をかけられたら俺でもビビります。でも先輩は違った。純粋にカッコいいと思いました」 「……ありがとう」 「そこからです。先輩が可愛く見えて仕方なくなりました。俺から見える先輩は、本当に可愛いんです」  
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