再会

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乗り込んだ電車は昼下がりと言うこともあり、空いていた。 座席に座り。膝の上に先ほど購入した和菓子を乗せて、電車の揺れる音を聞いてやっと気持ちが落ち着いた気がした。 そして目の前の座席にいる、高校生の仲睦まじいカップル。彼女に語りかけている、学ランを着た少年の姿を見て記憶が刺激される。 (黒須君は同年代の男の子達と比べると、身長がスラリと高かったな) 今でも瞼を閉じると、高校生の黒須君の姿が鮮明に浮かぶ。 艶やかなさらりとした黒髪。切れ長の瞳は睫毛が長いせいか、憂いを帯びた柔らかな印象。制服の学ランがより、知的さを引き立てて良く似合っていた。 高校生なのに大学生みたいな大人ぽっくて、賢くて。男女共に人気者だった。まさに高嶺の花的な存在。 そんな黒須君の周りにはいつも人が居て、私は物陰から見るだけで胸をドキドキさせていた。 そして高校二年生のとき。同じクラスになれた。近くで見る黒須君はやっぱり素敵だったが、ある事に気が付いた。 それは私の祖母が華道の先生をしていて、お母さんも華道の先生。必然と私もお稽古事として華道を習っていたが、その華道の精神。 それは『礼儀作法を大事にし。修行や稽古を重ねる。 お花の命を尊び、生ける人の精神性を豊かに高めれる』──と言う事なのだが。 当時の私にはちょっぴり難しく。
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