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母を見ると、水仙の葉を落とし終え。茎の角度を調整しながら花器にすっすと、バランスよく花を刺していた。
「真白ちゃん。ありがとうね。お母さんも真白ちゃんの言う通りだと思う。ちゃんと請求書なんか払いませんって言って、裁判した方がいいとは思う。でもね……ちょっと、お父さんが亡くなったときの事を思い出してしまって。どうしても辛くてね……ごめんなさい。もう少しだけ時間を頂戴」
「お母さん」
「年を取ると、不安ごとばかり考えちゃうの。ダメよね。さ、水仙も活け終わったし。お茶でも淹れようかしら。ほら、真白ちゃん。おばあちゃんも呼んできて」
この話はいったん終わりと言うように、母は明るく笑った。
それを見て今日はここまでかなと。あまり無理な事はしたくない。
それに請求を要求された期限まで、まだ日にちに余裕がある。
(日にちといい。三十万円と言う金額なんて、こちらの足元を見てるみたい。本当にいやらしいやつ!)
憤慨したい気持ちを抑えて。
「分かった。実はね和菓子買って来てるの。お父さんの好きだった、栗羊羹もあるから皆で食べよう」
そうしましょうと、笑う母に一先ずはほっとするのだった。
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