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何となく。昨日の黒須君の雰囲気に近しいものを作ってしまってちょっと、恥ずかしくなってしまった。
ママさんは「今日のはなんだか、艶やかな仕上がり」と、喜んで下さったのは結果的には良かった。
(だって昨日あんな事があって。黒須君からメッセージが来るかもしれないって思うと、そわそわしちゃうから)
こうして、ふと気が緩んだ時に黒須君の存在を思い出してしまう。休憩中はずっとスマホを意識してしまっていた。
(私から連絡した方がいいのかな。でも、弁護士の人って忙しいと思うし)
今日一日は様子見かなと思っても。落ち着かなかった。とはいえ、仕事は午後も残っている。
気持ちを切り替えないと思いながら、紫のブーケ持ったママさんをお店の外まで見送った。
「さ、次はミニブーケの量産をしようかな。朝に結構売れちゃったしね」
ママさんの背中が雑踏に消えて。
ふっと、軽く息を吐いてお店に戻ろうとすると。
「すみません。私にも花を貰えますか?」
聞き覚えのある声がして。振り向くと、雑踏の中でも目立つ整った容貌の男性。
黒須君が立っていた。
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