接触

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黒須君に誘われてしまった。 ともすれば、また浮ついてしまう気持ちを堪え。ひたすらミニブーケ作りや配送作業に集中して、何とか仕事を定時で終わらせた。 その場しのぎだけれども、手持ちの化粧ポーチで何とかお化粧直しをして、いそいそと指定されたコンビニに向かい──少し待っていると。 周囲の車と一線を画すような、壮麗なボディの黒の車がコンビニの駐車場に停まった。 まさかと思うと、そのまさかで。 運転手席側の扉が開き。黒須君が降りてきて、私の姿を見つけると軽く手を上げた。その軽やかな動作だけでも、ときめいてしまう。 緊張しつつ立派な車の助手席に乗り込み。まずは食事に行こうと誘われた。連れて行かれたお店は、おしゃれなイタリアンバー。 そこは狭い裏路地の隠れ家的なお店。 店内は雰囲気が良く。香ばしい香りやじゅうじゅうと肉が焼ける音が、良い店だと教えてくれているよう。 黒須君がおすすめと、オーダーしてくれたのはオーガニックオリーブに、プロシュートのブルスケッタの前菜。 鮮魚のカルパッチョ。 フルーツトマトソースのミラノ風カツレツ。 どれも見た目が美しく、それに合うドリンク。ノンアルコールのスプリッツァも頼んでくれたのに。 緊張し過ぎて味が良く分からなかった。
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