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「ここが俺の家。どうぞ」と、案内された先には重厚な扉があり。
黒須君がガチャりと扉を開けると、その向こう側はアイボリーホワイトで統一されたモダンな空間だった。
四角い広い玄関。
そこから続く、幅広い廊下の先に大きな窓とリビングルームが見える。
余分な装飾やなく。生活感がない白一色。けれども、壁や廊下をほんのりと照らす間接照明の温かな光や、足元のフットライトが無機質な空間に柔らかさを演出していた。
「わぁ。ホテルみたい」
「広すぎて持て余しているだけ。これからは櫻井さんが、好きなようにしてくれていいから」
「私が……」
「必要なものがあれば買えばいい。俺のカードを
渡す。それで俺の書斎以外は自由にしてくれていい」
(カードって、クレジットカード? まさかね)
いきなりカードの話題はし辛く。とりあえず、お邪魔しますと言って。黒須君が出してくれたスリッパを履いて、そろりとお家にお邪魔した。
廊下を歩いた先に、玄関から見えた広いリビングルームがあった。
そこも白い家具で統一されていて。非常にシンプルな部屋だったが、それが返って贅沢な空間だと思った。
「そこのソファにどうぞ」
言われるまま、大きなソファに座る。
黒須君はさっとジャケットを脱いでソファに置いてから、リビングから見える。まるでプロ仕様の立派なアイランドキッチンの向こう側に移動した。
そのキッチンで、さっと手を洗いながら訪ねて来た。
「この家には申し訳ないが紅茶や珈琲とかも無くて。天然水か野菜ジュースぐらいしか置いてない。どちらがいい?」
「あ、えっと。お水で大丈夫です」
黒須君が分かったと返事をして、後ろの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。
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