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キスは初めてでは無かった。
大学生のとき一度経験した。しかし、それは昔過ぎて体温も、相手の人がどんな顔をしていたかサッパリ思い出せないもので。
食事会の終わり。駅まで送って行くと言ってくれた人に、掠めるようなキスをされた。
そんな予感はあったから、キスも予定通りの印象だった。
それよりも周囲の目が気なってしまい。逃げるように家に帰り。その人ともなんだか、気まずくてそれっきり。お付き合いに発展することは無かった。
だから、キスは誰としてもそんな感じかなって思っていたのに──。
ふわりと黒須君の唇が触れあい。ソフトタッチで呼吸に合わせるかのような、優しいキスは暖かく。気持ち良くて驚いた。
その癖、掴まれた手首は強くて振り解けそうにない。両足にいつの間にか割り入れた、黒須君の足のせいで身動きも取れ無かった。
「んっ、ふっ」
思わず唇から吐息が漏れた瞬間。僅かに開いた唇の隙間に、滑り込むように黒須君の舌がぬるりと、侵入した。
舌で丁寧に口腔内の粘膜を舐め上げられ、今まで感じた事のない刺激に早くも涙腺が緩む。
「んんぅっ」
さらに舌を絡め取られ。くちゅっと水音が響く。柔らかなキスは淫らな刺激と快感に変わり。
背筋がゾクゾクして体から力が抜けて行く。
「ん……ンッっ、ぅ」
「柔らかい唇だ」
黒須君のそんな感想すら、心が高鳴り体を震わせしまう。早くも呼吸が乱れて『嫌』だなんて言えない。
掴まれた手首はいつの間にか、手先に移動して指が絡みあい。まるで恋人同士のようにキツく絡みあっていた。
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