再会

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こんなことはおかしい。母は何も悪くない。 謝罪すらしない、九鬼氏に怒りを禁じ得なかった。 だから、代わりに私が警察に相談しに行った。九鬼氏に治療費と謝罪を求めたいと。 そうすると母に大きな怪我が無かったことや当時の状況から。刑事事件で訴えるより、民事での示談を進められた。 (母は相手が誰だか分かったから。揉めたくない一心で一番最初に警察を呼ばなかった。それを悔やんでも仕方ない。病院には行って一応診断書は取っているけど、なんでこちらがお金を払わなくてはならないの) 母は今も事故の捻った足の具合が良くなく。気落ちしてしまっている。母が自分が悪かったと、自分を責めているのを見るのが辛かった。 このままじゃ、やり切れなくて。 地元の小さな弁護士事務所ではなく。 少し離れた隣の市の有名弁護士事務所を頼り。 こうして、思わぬ黒須君との再会にびっくりしたのだった。 思わず今までの事を整理するように考えていると。 「考え込むのはわかる。でも、藁にも縋るような気持ちで此処に居る。今なによりも必要なのは、弁護士の私のはずだ」 「っ!」 すっと耳元で蠱惑的に囁かれてしまい。 思わず黒須君を見た。 近くでみる黒須君はあの頃と変わらず、黒百合みたいな美しい佇まいに端正な顔立ち。 近くで見るとその美貌にたじろいでしまう。
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