執着

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それでも真白に触れて、真白から俺を求めてきた喜びは、今だに尾を引いて法悦にも近いと心が騒めいてしまい。 気を紛わさせる為に、プツリと白いアルストロメリアを一輪、手折った。 そのまま口元に花を寄せる。 アルストロメリアに香りはない。しかし、生花特有の青い香りはどこか懐かしく。 その香りで脳裏に懐かしい、過去の記憶が鮮やかに蘇る。 それは勿論、南真白のこと。 甘やかな秘めたる想いと、苦い想いが胸中に広がる。 記憶を瞼の裏に馴染ませるように、ゆっくりと目を瞑った。 南真白との馴れ初めは高校二年生のとき。 クラスメイトになった事がきっかけだった──。
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