執着

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それは松井所長のご子息。記者であり。そして俺の友、松井悠馬(まついゆうま)から。 沼知(ぬまち)議員の汚職問題を追っている事を秘密裏に打ち明けられ、法的なアドバイスをしていた。 その際に沼知議員と繋がりがある、九鬼氏の名前を度々聞いていたのだった。 それがこのような、巡り合わせになるとは思わなかった。 ふと、ため息を吐いて気持ちを整える。 「片付けは後でいいか。先に悠馬に連絡しとこう」 名刺は真白から預かった直後、食事をする前に直ぐに書斎の机に置いていた。 そのまま花を持ち。書斎に向かう。 書斎は仕事部屋も兼ねている。仕事柄、個人情報を扱うので一人住まいではあるが、念のために鍵を付けていた。 書斎のドアの前に立ち。ポケットから鍵を出して、扉を開けて部屋に入り。直ぐに室内の灯りのスイッチを入れる。 右側の壁には本棚に専門書がずらり。 奥の仕事机にはオールインワン型のシルバカラーのデスクトップパソコン。 他にも机の上には経済雑誌、週刊誌などが置いてあり、その横に九鬼史郎の名刺もあった。 さっと、パソコンを立ち上げて悠馬のパソコンアドレスに話したいことがある。内密でと送った。 送信ボタンをクリックしてから、眼鏡を外す。 レンズには度数が入ってない。所謂、伊達眼鏡。 眼鏡は仕事柄、年齢を少しでも上に見せたいために着用していた。パソコン作業も多い為ブルーライト対策も兼ねている。元より視力は良い。 軽く眉間を揉んでから。 裸眼の視線をディスプレイから、右の壁に向けると。 壁の前には脚の長いスタンディングの机。 その上には先日、真白が作ってくれたビタミンカラーのミニブーケ。その横には白い華奢なフレームに収めた真白の髪の毛。 そして──壁には真白の大小の写真がずらりと貼られていた。
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