執着

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壁に飾っている全ての写真は一番最初、この家のソファの上で初めて真白に触れた時のもの。 だから壁一面の写真の全ては、眼を瞑っているものばかり。 頬を上気させて黒髪が乱れ。 ソファに力なく横たわり、衣服が乱れていた。 それはとても官能的で美しかった。 俺が触ると真白はあっさりと果てた。その隙にスマホで撮った。同じく写真のフレーム内に飾っている髪も、ソファの上に落ちていたものを拾った。 ビタミンカラーのブーケはクライアントに渡すと言うただの口実で、本当は真白が作ったものが欲しかっただけ。 「もっと欲しい。普段の真白の姿も飾りたいな……フラワーショップで働いている姿の真白も、愛らしかった」 壁の写真は耳。唇。指先だけのアップものもあれば、全体の写真や衣服だけを写したものある。 本当は裸体まで写したかったが、それは真白の意識があるときの方がいい。 誰の前で白い肌を晒しているか、その視線が欲しいと思ったので辞めておいた。 まだ真白の全てを手に入れてない。それがもどかしく。いつでも真白を直ぐそばに感じたくて。その衝動の結果がコレだった。 パソコンの机から離れ。 花を持ちながら、一際大きなサイズの写真の前に立つ。真白の横顔の写真。この写真は特にお気に入りの写真だった。 長いまつ毛が影を成して、唇は薄い桜色。頬は薔薇色。まるで瑞々しい水蜜桃のよう。その写真の唇につつっと触れ。 「こんなことが真白にバレたら、真白は怒るかな……俺だって分かっている。こんな事はダメだって。でも好きなんだ。どうしようもない。全てを手に入れたい。俺だけのものにしたい──今の俺はあの時と違う」 独白を虚像の真白に捧げる。 こうまで真白に想いを募らせるのは、夏祭りの約束が果たされ無かったその後にあると、自覚していた。
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