執着

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夏祭り後。 数日間、分かりやすく落ち込んでいた。 今後どんな顔をして、真白と接したらいいのか全く分からなくて。課題も手に付かなかったのを良く覚えている。 二週間後ぐらい経ってから。 母親から真実を聞いたのだった。 『クラスメイトの南さん。お父様が交通事故に巻き込まれて、お亡くなりになったんですって』 『相手の方と揉めて、お母様が心労で倒れたそうよ。そのまま田舎に引越すそうで。お可哀想に』 寝耳に水とはこのこと。調べてみると事故が起きたのは、あの夏祭りの日の事だった。 全てに合点が行った。 真白には来れない理由があった。連絡出来ない状態にあった。ならば、今すぐに嘆き悲しんでいるであろう、彼女の力になりたいと思い。家を飛び出して──と、思ったけれども。ふと我に帰り。 やめた。 高校生の俺に何が出来ると言うのだろうか。 大丈夫かと励ましたところで、大丈夫なわけじゃない。何しろ肉親が死んでいる。 言葉で力になれず。現実的な金銭的な援助などは出来る筈もなく。 しかも、南真白の父親は事故の被害者だと言うのに相手は心神喪失、鬱状態だったと主張し。随分と揉めていると風の噂で聞いた。 そんな混乱の最中。引越し先に真白の彼氏でもなんでもない俺が。 ただのクラスメイトがいきなり現れたら、ご家族にも負担だろう。 慰めの言葉も、経済力も、問題事を解決出来る力も、高校生の俺には何一つ持っていなかった。無力過ぎていっそ清々しい。 好きな女の子を守ってやることも出来ない。なんと惨めで、非力で無価値。役立たず。
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