執着

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『契約』と言う言葉を使用したのは、判断に余地を与えると思ったからだ。 後で何か言われようとも、これからも交際期間の実績、婚約者として振る舞いを重ねて。指輪も早々に贈り。 容易に婚約関係を否定出来ないように。 ──法律からでも絡め取るのみ。 こんな事は真白からすると不安だろう。 何かしらの抵抗があるかと思ったが、真白は思いのほか。従順に俺に従っているように見えた。 それは俺の持つステイタスや経済力。そんなものに惹かれた可能性もあるが、惹かれてくれるなら何でもいい。 惹かれている間に、俺は真白の汚れを知らない体に喜悦、愉悦、悦楽を植え付け。心の奥に踏み込むだけ。それで俺の体を求めるようになったら上々。 こんなことは一般的には卑怯なことだろう。非難や誹りを受けても仕方ないと理解はしている。 だから俺の心まで求めて欲しいなど願ってない。 体だけの繋がりでも充分。 「……絶対に逃がさない」 写真の真白につぶやき。ふと手の平を見ると。 いつの間にか手折ったアルストロメリアを強く握りしめていたらしく、はらはらと花弁が床に落ちていった。
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