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反撃
名刺を宇喜田弁護士から貰い。
黒須君の家に行ってから一週間が、あっという間に経ってしまった。
最初の三日間は黒須君の事で頭がいっぱいで、非常にソワソワしてしまった。
でも、段々と九鬼氏が指定したホテルでの食事の日程が近いてくると、違う意味でソワソワして。落ち着くようにと自戒していった。
そして今日。
いよいよ、九鬼氏に会う約束の日を迎えたのだった。
私は九鬼氏が指定した都内のホテルのレストルームの鏡の前に居たけれども、それは九鬼氏と食事をしようとかではない。
「大丈夫。落ち着いて。キッパリと母は弁護士を付けて戦う姿勢です。今日はそれだけを伝えに来ただけですって、言うだけだから」
ふぅっと、深呼吸して鏡の中の私に視線を向けるけど、まだ表情は硬い。
黒須君の予想通り。母と祖母にスーパーの前で起きた出来事を話すと。
二人は嫌がらせが怖くて、娘を守れないなんて。亡き父に顔向けが出来ないと憤慨し。
母は次の日には黒須君の元に向かい、正式に依頼したのだった。
私の『契約妻』と言うのは依然、秘密。
家族や周囲にはまずは黒須君とお付き合いを始めたと言うことから、段階を踏んで行こうと黒須君と決めた。
それも打ち明けるのは、九鬼氏とのことが終わってから。
「……あれから黒須君とは連絡はしていて、今日の事とか。打ち合わせで会ってはいたけど……」
デートとかではなく。
全て九鬼氏への対策に向けての打ち合わせ。
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