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今から会う九鬼氏に対して、そんな気負いもあり。緊張は否めなかった。
黒須君は本当なら同席予定だったけれども、急な仕事が入ってしまい。
仕事が終わり次第に、直ぐにこちらに来てくれると言う運びになっていた。
「黒須君が居なくてちょっと心細いけど。子供じゃないし。場所はレストランだし。他の人もいるから大丈夫」
もうそろそろ行かなくてはと、ちらりとレストルームの大きな鏡を見る。
今日の服装はフォーマルでシックな黒のワンピース姿だった。
耳と首にはパールの揃いのアクセサリー。靴は足元を引き締める、光沢のあるブラックのヒール。
爪は仕事柄ネイルが出来ないけれども、ピカピカに磨いて貰っているし。メイクも髪も、プロの手で綺麗に整えて貰っていた。
そのお陰で肌艶はいつもより綺麗に見えた。髪はきっちりとシニヨンに纏めあげられている。
でもこれは私が用意したものじゃ無くて、ここに来る前にメイクアップサロンにて。事前の打ち合わせの時に黒須君が全て用意、手配してくれたもの。
特に髪を纏めているビジューの飾りが美しいバレッタは黒須君、自ら事前に選んでくれた。
ホテルのTPOに相応しいものを。九鬼氏に足元を見られないように、衣装も戦う為には必要だと。黒須君がこのドレスも小物も含めて、全て整えてくれていたのだった。
本来ならもっと華やかな姿の方がこのホテルには相応しいが、今日は食事をする為じゃない。
「黒須君が用意してくれた、この姿に相応しいように胸を張らなくちゃ」
気合いを入れ直し。黒のクラッチバッグからリップを取り出して、きゅっと唇に乗せた。
「よし。頑張ろうっ」
メイクも気持ちも整え。
しっかりと気合いを入れて、九鬼氏が待つ最上階のレストランに向かうのだった。
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