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九鬼氏から指定されたレストランは、高級中華料理店。
お店はホテルの最上階にあるだけあって、店構えからして存在感があった。
入口のサイドには白磁に藍色の彩釉が美しい、大輪のシャクナゲが描かれた大きな壺が飾られ。
店の名前を掲げている大きな、黒い看板が高級感を演出していた。
そんな高級店な店構えに気後れしそうになるのを、背筋をピンと伸ばして。入口のスタッフの人に声を掛けた。
「九鬼氏」の名前をと自分の名前を名乗ると、どうぞこちらにと。中に案内された。
店内は金とブラウンで統一され。白い円卓のテーブル。水墨画の屏風。天井から吊るされた六角黒格の赤い提灯ライトが、モダンな空間を引き締め。とても雰囲気が良い。
そこで楽しげに食事をしている人達を横切り。案内された部屋は個室。
屏風の向こう側にあり、いかにもって言う感じがした。部屋に入る前に拳をぎゅっと握りしめる。
ドキドキする心臓を宥めて、案内係の人が恭しく扉を開いたその先に。
壁に大きな龍虎の水墨画。黒檀の長机。天井の中華風の飾り絵。
ホールより凝った内装の作りに目を奪われそうになった、けど。
上座にふんぞり返っている人物に注視する。
「櫻井真白さん。初めまして。ようこそ、さぁ。こちらにお座りなさい」
中年の男性がニヤリと笑って私を出迎えた。
九鬼史郎に間違いないと思った。
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