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思わず一歩後ろに下がりそうな、脚を叱咤して。
勇気を奮い立たせて、思っている言葉を口に乗せた。
「部屋なんて行きませんっ。今日、私がここに来たのはホテルで過ごす為じゃない! 母は松井弁護士事務所所属。黒須弁護士に依頼をして、今回の事をしっかりと。法律という公平な場で決着をつける事にしましたっ。それを言いに来たんです!」
「弁護士だと?」
「近いうちに、まずは内容証明が届くのでそちらを読んで下さい。何かあれば全て黒須弁護士まで。私や私の家族には一切近づかないで下さいっ」
「ふんっ。小賢しい。母親に弁護士などと、入れ知恵をしたのはお前だな? ワシに逆らうとはいい度胸だ。折角穏便に済ませてやると言っているのに」
一歩、じりっと私に近づく九鬼氏。
その表情は険しい。
流石に一歩。怒りより恐怖が勝り、後ろに下がってしまう。
「ふ。ふざけないで。何が穏便にですか。私はあなたみたいに、交通ルールすら守らない非常識な人。不愉快でなりません。話は以上です。失礼します」
もう、言いたいことはちゃんと言えた。これでさっさと此処を出て、黒須君と早く合流したいと思って踵を返すと。
がしっと、九鬼氏に腕を掴まれてしまった。
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