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「なっ、なんだお前っ。いきなり入って来て弁えろっ!」
口角から泡を飛ばして怒鳴る九鬼氏。
私は黒須君の腕の中でびくりとしてしまうが、黒須君は身じろぐこともなく。
私に向けていた優しい眼差しいから、刃物のような鋭い視線を九鬼氏に向け。私を庇うかのように一歩前に出た。
「私は松井法律弁護士事務所所属。黒須絢斗と申します。この度は櫻井翠さんから依頼を受け、櫻井さんを弁護することになりました」
「べ、弁護士だと?」
「その過程でご家族の櫻井真白さんからも相談を受け、この場に参りました。事情は全て把握済みです。お互いの言い分はここでは無く、公平な場所で審議をしましょう。近日中に少額訴訟による原告側からの金銭の支払要求。主に治療費や壊れた自転車の請求、慰謝料。それらを要求する訴状を送らせて頂きます」
「はっ。少額訴訟だと? そんな小銭稼ぎの弁護などたかが知れている。生意気な青二才が。何も弁護士はキサマだけじゃない。こちらにも弁護士の、」
「弁護士の宇喜田俊道。日本弁護士協会・登録番号は04071219番。登録住所はあなたが所有する青木ビルの五階。あなたのお抱え弁護士に違いないですね?」
それがどうしたと、九鬼氏は唸る。
黒須君は構わずに述べる。
「宇喜田法律事務所。webの紹介ホームページを見ると更新されたのは五年前。スマホ用のホームページは未対応。法人向け、個人向けのカテゴライズすらない。取扱い業種の案内も見づらく、不親切な作り。今までの実績案件は不明。所属弁護士の紹介は宇喜田氏のみ」
「だから、言いたい事はなんだ」
「そんなwebの管理すらまともに出来ない。弁護士をお抱えにしている人が居るのならば。その人物こそ、たかが知れていると言うことです」
ハッキリと言い放ち。
ふっと、黒須君は冷笑したのだった。
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