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「っ!」
今度こそ九鬼氏の顔の顔色が変わる。
反論しようにも、こうまでキッパリと言われると流石の九鬼氏も言い返す事が出来ないようだった。
その間に黒須君は饒舌に語る。
「弁護士は場数。どれだけ様々な案件をこなして来たが実力になる。松井弁護士事務所の所長の松井は数々の有名企業の法務アドバイザーを経験。同時に有名企業の顧問弁護士も担当。副所長は個人向けの離婚問題から犯罪被害などの刑事事件などが得意。私はインターネット法務、犯罪被害者コンテツが得意だ。詳しくはホームページをご覧下さい。キッチリと所属弁護士の顔写真、学歴、解決事例、対応分野、全て記載しています。それで私の実力も分かるかと」
ぎりっと歯を軋ませる九鬼氏。
いつの間にか、整えられていた髪も乱れていた。
最初こそハラハラしたが、堂々とした物言いの黒須君に、場違いにも見惚れてしまいそうになっていた。
最後のトドメと言わんばかりに。黒須君は眼鏡のテンプルをそっと押し上げ。
「宇喜田弁護士はどうやら、名士と言われるあなたの傘下にいる事で、弁護士業に胡座をかいてるようにしか見えない。まるで虎の意を借りる狐だ。しかし、覚えていて欲しい。虎も狐も所詮──獣。知識を備えた人間には勝てないと言うことを」
冷静に言い放った。
九鬼氏は一瞬、ポカンとした後。わなわなと体を震わせる。
「ゴチャゴチャと煩いガキが! ワシに喧嘩を売るのかっ! ワシのバックにはあの沼知先生が居るんだぞ! お前の事務所ともども、目に物を見せてくれるわっ!」
その言葉に黒須君はふっと呆れた様子で失笑すると。九鬼氏は顔色を憤怒の色に染め上げ、ばっと大きく手を振りかざした。
そして鬼気迫る表情で、こちらに大きく一歩を踏み出す様子に、暴力沙汰になってしまうんじゃないかと。
心臓が痛いくらいに不穏に高鳴った。
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