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友人
手を挙げる九鬼氏にこれは、殴り合いの喧嘩に発展するのではと身をすくませると。
突然。部屋にカタコトの明るい声がこだました。
「哎呀! ドウカシマシタカ?」
ギョッとして声がした後方を見ると。
部屋の入り口近くに男性スタッフらしき人が居た。しかし、その顔には黒い丸眼鏡。鼻の下に八の字の髭。オマケに頭の上には黒いチャイナ帽。
「な、なんだお前は」
毒気を抜かれたかのように、その場に立ち止まり。手を振り上げたまま呟く九鬼氏。
コレばっかりは私も九鬼氏と同じ意見だった。
突然の闖入者に唖然としてしまうが、怪しいスタッフは、口元をニヤニヤさせてこちらに寄って来る。
黒須君は何とも思わないのかと、顔を見つめると。
視線が合った。すると黒須君は微かに苦笑し。
優雅に長い指先を一本、口元に添えた。
まるで『大丈夫。問題ない』と、言われたような気がした。
それを見て何となく。このまま静かに様子を伺う方が良いと思い。こくりと、頷くと。
黒須君はスタッフらしき人に「すみません。この男性に暴力を振るわれそうになって、困っているんです」と、全く困ってない様子で言った。
するとスタッフらしき人が、びっくり! と言った様子で大きく手を振りながら。
「それは大変。ケンカ、ダメね! 暴力反対!」
言葉と同時にポケットから小さな黒い楕円の物体をポンポンと。リズミカルに九鬼氏の足元に投げつると、それが一切にけたたましいアラーム音を鳴らし始めた!
瞬時にこの音は防犯ブザーだと分かった。
それでも九鬼氏も一体何が起こっているか分からない様子で、その場で足をばたつかせ。
何か大きく口を開けていたが、何を言ってるか分からなかった。
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