友人

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カツンと、また一歩近づき。 私達を見ると、ふっと笑った。 「わぁ。お取り込み中?」 その言葉にばっと黒須君から慌てて体を離す。 すると黒須君が名残り惜しげな小さな溜息と共に、怪しい人物に声を掛けた。 「俺の妻を愛でて何が悪い。それよりも真白、彼は松井(まつい)悠馬(ゆうま)。俺の友人だ」 黒須君に紹介された松井悠馬なる人物。 黒須君のお友達と紹介されて、しげしげと見てしまう。 「今回の九鬼氏の事に対して協力関係にある。信用しても大丈夫だ。悠馬。あの後、九鬼氏の対応は問題無かったか?」 悠馬と呼ばれた人物が、飄々と答える。 「僕を誰だと思ってんのさ。大丈夫。あのオッサンは怒り心頭で、責任者呼んで来い。出て行け! って喚いていたから二つ返事で、ドサクサに紛れて逃げて来た。僕の身柄を確保もしないで、現場から僕を逃してくれるんだから有難い話しだ」 そこで例のシニカルな笑みを口元に称えながら。 「あの単純さなら、堂々とケンカを売った絢斗に怒りが向くね。絢斗を倒そうと躍起になるだろう。まぁ、現場の人には少々迷惑掛けたが。僕が事前に手を回したスタッフが宥めているし。今後の事を思えばきっと許してくれるさ。大丈夫」 その言葉を聞いた上で黒須君は頷いて「お疲れだったな。では、真白に事情説明を頼む」と、私に会話の流れを向けた。
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