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悠馬と呼ばれた人物は、はいはいと手をあげてから。ささっとサングラスや帽子。
それに髭をべりっと取った。その様子から変装だったと分かり、目を丸くしてしていると視線があった。
「こんばんは。僕は今、絢斗に紹介された松井悠馬です。絢斗とは大学で知り合ったのが馴れ初め。職業は記者。よろしく」
にこにこと爽やかに笑う目の前の人物。
やや明るい茶色の髪色。変装の下の素顔は人懐っこい好青年そのもの。しかし、切れ長の瞳が知的で印象な人だった。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。櫻井真白です。髭とか眼鏡、変装だったんですね」
「うんうん。よろしく。変装は記者の嗜みさ。分かりやすい特徴があればある程、周囲を欺ける。いやぁ。それにしても。君が真白ちゃんかー。絢斗から聞いていたけど。可愛いねぇ。実に可憐だ」
社交辞令だと分かっているけども、面と向かって言われると恥ずかしい。
小さく「そんなことありません」と、否定する。
「絢斗が惚れ込むのも道理──って、絢斗がすっごい睨んで来るから、ささっと話をするね」
「は、はい」
あははと軽やかに笑う松井さん。
なんともマイペースで明るい人物の登場に、肩の力が抜けて小さく笑ってしまうのだった。
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