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南真白は男女共に人気があった。
しかし、真白の交流関係は専ら女子のみ。男子との付き合いは薄く。
男子の間では『南真白は見るだけ』『抜け駆けは御法度』そんな暗黙の了解があった。
それこそ、繊細な花を愛でるような空気感が確かにそこにあった。
だが、俺はどうしても一歩。踏み込みくなった。
それは単純なる好意。分かりやすく言えば──
初恋故の行動。
真白が放課後、夕日を浴びながら花を活けている姿を目撃し。
華奢な体の輪郭を黄金色に染めているのを見て、その輪郭に触れたくなり。近づき、気が付いたら夏祭りに誘っていた。
口に出したあと、すぐに断れるかもしれないと後悔したが。
真白はにかみながら、快諾してくれた。
とても嬉しかった。
二人で夏祭りを過ごし。花火を見て。終わった後に告白しようと思っていた。きっと、美しい彼女はこのままだと遅かれ早かれ、誰かのものになってしまうだろう。
そんなのは許せなかった。
異性に対して好意も執着とも思える気持ちも、独占したいという気持ちも、全て真白が初めてだった。
「単純に凄く好きだったんだろう……」
その気持ちに今も変わりもない。
「だが──」
ふと目を開ける。
手折ったアルストロメリアを強く、握り締めそうになる。
儚い花を見ながら、約束の当日の事が追想される。
夏祭り会場である神社の鳥居の前での待ち合わせ。時刻は17時。
慣れない浴衣を着付けて、少し早めに着いた。行き交う人達にそわそわして、同級生を見ればそっと柱の影に隠れた。
そうして待っていたけれども──真白は来なかった。
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