〚プロローグ〛

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〚プロローグ〛

「お母さーん。 そろそろ学校行くー」 ―――朝、時刻は8時前。 ローファーに足を突っ込んで、コツコツ音を鳴らしてみる。横を向くと、玄関にある姿見で自分の身だしなみをチェックする。 よし、外見は今日もばっちし。 生まれてから一度として変わらぬ茶色味の強い髪に、きちっと締まったネクタイ。メイクなんかする勇気は無くて、せめてものリップグロスが口元で艶を帯びている。 鏡に映る私は、何処にでもいる平凡な女子高生そのものだ。 「知優香(しゅうか)」 名前を呼ばれて振り返った。 そこにはエプロン姿のお母さん。食器洗いの途中に慌てて来たのか、手先が少し濡れている。 「お母さん。 ……はい、においチェ〜ック!」 バッと両手をお母さんに向けて広げる。何もこれはハグを要求しているわけではない。毎朝恒例のをするのである。 「―――うん、大丈夫。 今日もお母さんと同じ匂いよ」 お母さんはこちらに近づくと、そっと私の身体へ鼻を寄せた。匂いを確認し終えると、そう言ってにっこり笑いかけてくれる。 「良かった!じゃあ行ってくるね」 続いて聞こえる「行ってらっしゃい」に背中を押され、私はドアに手を掛けた。
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