シングルノート

2/15
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「ラベンダー」てなんだ? ラベンダー、ラベンダー、らべ…―――ベランダか? ………待って! これ、端から見たらすっごいアホな子だっ。 脳内で一人コントをし出した私を他所に、周りの女子は騒ぎ始める。その先陣を切ったのは、鈴代(すずしろ)ふみかちゃん。因みに私は「ふみちゃん」と呼んでいる。 「ほおら当たってた! 知優香はやっぱラベンダーっ」 「えー、わたしてっきり柑橘系かと思ってた」 「ね〜。フローラルかぁ…… ま、確かにそんな気もしてくるけど」 ガッツポーズを決めるふみちゃんと、残念そうにしたり納得したり忙しそうな女子が数人。その横で莉央が「いや、ラベンダー推し始めたの私なんだが」とツッコミを入れていた。 ふみちゃんはズバリ、元気ハツラツ系お転婆女子。 莉央と並ぶと子ども感が強くなるが、彼女の可憐な可愛らしさが際立って良いと、私は思う。 「……ま、私は断然このホワイトローズ。 これ、マジで良いから。プリドラの中で一番好きかも」 周囲の様子が落ち着いて、私も現実世界に戻ってこれた時。莉央が突然熱弁を始めた。 手には、只今話題の中心にあるハンドクリーム。そして、彼女が口にした「プリドラ」とは、日本を拠点とするファッションブランドの通称である。 正式名称は『prière de l'ange(プリエール ド ランジュ)』と言い、今若者を筆頭に国内で大人気のブランドだ。我がクラスのファッションリーダー・莉央は勿論、「プリドラ」のコスメを愛用している。 そのせいもあって、私たちのクラスの日常会話では「香り」が頻出単語となっていた。まあ、実を言えば、この話題に拍車をかける大物人物がいるのだが…―――今日はまだ来てないみたい。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!