シングルノート

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「よっ! 流石、我らがファッションリーダーっ」 両手を口元に持ってきて小さいメガホンを作った。この手の会話に私は、いつもガヤに回るのだ。 「莉央はマジで香りもの好きだよね」 「ハンドクリームもそうだけど、香水とかもめっちゃセンスある!」 「分かる〜! 今日の、私すっごい好き!」 「え、気づいてくれたっ? これ、プリドラの新作なんだよねーっ」 莉央を口々に褒め出す女子たちに、彼女も嬉しそうに返す。ボスやリーダーと言えど、誰もが彼女に気兼ねなく接する。それがこのクラスの良いところだろう。 でも、そうやってクラスが良い雰囲気になれるのは、やはり莉央から滲み出る人の良さにあると思った。 「良かったら今度試してみる?」 「え! いいの莉央?」 「もち。 プリドラのファンが増えてくれると嬉しいし」 にっと口角を上げると笑くぼが出来るところとか。莉央が人気な理由が分かる気がして、私は皆んなの様子を後ろから達観していた。 「もぉおおっ、 あたしだってプリドラの香水してるもん!」 ―――否、違った。 「ね、知優香っ。良い匂いするでしょ?!」とこちらへ身を寄せてくるふみちゃんに苦笑する。 いつもの如く、莉央に嫉妬して牛さんになってしまった彼女のお相手をするのが私の務めであった。
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