シングルノート

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莉央が二組のファッションリーダーなら、朝日向くんはフレグランスリーダー(?)とでも言うのだろうか。 勿論、『フレグランスリーダー』という言葉など存在しないのだが。そう謳われるほどの強者であることは確実だ。 騒めき始めた教室の中心で「まあでも、」と朝日向くんは斜め前の莉央へ視線を流した。 「正解だよ、如月」 机の上で頬杖をついてそう言うと、口角を上げる。普段クールな彼の珍しい仕草に、一部の女子から心を射抜かれる音がしたような気がする。 「マジで?見たい見たいっ」 「全然まだ試作段階だけどな」 凄い勢いで喰いついてきた莉央に若干引きながらも、朝日向くんは自分の鞄を漁る。 そして彼が取り出したのは―――小さな小瓶。 その中でゆらゆら煌めくのは透明に近い水色の液体。つまり香水、である。 朝日向くんはいつも良い香りを漂わせている―――。 これが彼の人気の秘密。勿論、顔が良いのも一つの重大な要因ではあるのだけれど。それを上回るものがこのだった。 それが今、彼の手の中にある香水。 朝日向くん自らが世界にたった一つの特別な香水だ。 ここまで言えばもうお分かりであろう。 そう、朝日向くんは単に香水を身につけているわけではない。自分の手で調香して、様々な新しい香水を創り上げているクリエイターなのである。
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