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「花音を苛めたお礼もまだしてないし、ちょーっと嫌がらせでもして怒らせるかな……」
また、海星が憂鬱なため息をつく。
私としても社長たちには酷い目に遭ってほしいが、高志の前例があるだけに少し同情してしまう。
高志は起訴され、実刑判決が下るのは確実だと言われていた。
彼としては軽い気持ちで周囲の人間を騙していたんだろうが、これでもう前科者になる。
それも私が海星と出会ったからだ。
海星が高志を探し出して警察に突き出さなければ、彼はまだのうのうと普通に生活を続けていただろう。
「無理はしないでくださいね」
「ありがとう、花音。
しかし食事があまり進んでないようだが、どこか悪いのか?」
心配そうに海星の顔が曇る。
「あー……。
ちょっと食欲、なくて」
せっかく気分転換に連れてきてくれたフレンチだが、私の食べるペースは遅い。
なんとなく身体の調子がおかしくて、もりもり食べるという気にはなれなかった。
「病院、行くか」
私の答えを聞いてますます海星が心配そうになっていく。
「あー……。
大丈夫、です。
……たぶん」
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