第一章 三千万の借金

13/49
前へ
/287ページ
次へ
レイカさんに導かれ、女性たちの控え室へ向かう。 「メイクとヘアセット、しなきゃね。 今日は体験だからやってあげるけど、本入店になったら自分でやって」 「はい」 私を鏡の前に座らせ、彼女は私の眼鏡を外してメイクを始めた。 「肌は羨ましいくらい綺麗だよねー。 デパコスとか使ってるの?」 「デパコス……?」 それは少し考えて、ようやくデパートで買えるコスメ品だと気づいた。 「いえいえ! ドラッグストアのプチプラ、しかも適当手抜きなので……」 基礎化粧は時短でオールインワンのジェルを塗っただけで、ろくな手入れはしていない。 「それでこれだなんて、ほんとに羨ましいー」 話ながらテキパキとレイカさんは私の肌に化粧品をのせていく。 「これは……化けたわね」 「へ?」 ヘアメイクも終わり、眼鏡をかけて鏡の中の自分を見る。 見慣れたお堅い黒縁眼鏡をかけた、美女がそこにいた。 「……誰?」 「誰って、アンタでしょ!」 「いたっ!」
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2740人が本棚に入れています
本棚に追加