第一章 三千万の借金

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おかしそうに笑いながら、レイカさんが背中を思いっきり叩いてくる。 ……これが、私? いやいやいや、きっとなにかの間違いだって。 「こりゃー、私もうかうかしてられないな」 渡されたドレスに着替える。 それは太ももにまでスリットが入っていて、酷く恥ずかしい。 そのうち、店長が様子を見に来た。 「こりゃ化けたな」 「ま、私ほどじゃないけどね」 じろりとレイカさんが、ぼーっと私を見ている店長を睨む。 咳払いをして誤魔化した店長も、私の変わりっぷりが信じられないようだ。 「この眼鏡がなければ最高だけどな」 「あっ」 私の顔から店長が眼鏡を取り上げる。 「それがないとなにも見えないので勘弁してください」 「……二割アップ」 私が渋っていると、店長がなにかぼそりと呟いた。 「眼鏡なしなら時給、二割アップしてやるんだけどなー」 「うっ」 ちらっと私に視線を向け、素知らぬ顔で店長が宙を見る。 喉から手が出るほどお金は欲しい。 しかし、眼鏡は死活問題なわけで。 でも……。 「……わかりました」
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