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三木さんがレイカさんから身体を離し、私のほうへと寄ってくる。
向こうから憎々しげにレイカさんが私を睨んでいるのが空気でわかった。
「あー、えっと。
私なんてレイカさんに比べたら全然です」
曖昧に笑ってその場を誤魔化す。
彼女の上客らしき三木さんを私が奪うなどしては、雇ってもらえないのは私だってわかる。
「ま、いっか。
それで、レイカちゃん……」
興味なさそうに言い、三木さんは再びレイカさんへと身体を向けた。
笑みを貼り付け、相槌を打つだけして彼らの話を聞く。
しばらくして急に、店内が色めきだした。
背の高い男性が複数のキャバ嬢に囲まれて入ってくる。
「あっ、盛重さーん!
来てくださったんですねー」
語尾にハートマークがつきそうな声で、話をぶった切ってレイカさんが立ち上がる。
そのまま彼女はそのお客へと駆け寄った。
……のはいいが、〝盛重〟って?
いやいや、きっとただの同姓だって。
そちらをうかがうが、残念ながら眼鏡なしの私には見えない。
「……はぁーっ」
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