第一章 三千万の借金

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すぐ隣から呆れるようなため息が聞こえ、びくりと身体が震えた。 「結局、金かよ」 三木さんが動く気配がする。 「ん」 彼がこちらを向いたのはわかったが、なにをしたいのかまではわからない……というか、見えない。 「……はぁーっ」 またため息をついた彼からすぐに、カチリとライターで火をつける音がした。 あれか、煙草に火をつけろと言われたのか。 それは申し訳ないことをした。 「結局アンタも、あっちがいいんだろ」 三木さんは先程の客の席を顎でしゃくった……と、思う。 「えっ、あっ、私、はっ」 きっと彼は、私が煙草に火をつけなかったのを不満に思っているのだろう。 眼鏡がないので見えなくてわからなかった、などと説明していいのか迷っていたら、私の答えなど待たずに三木さんはひとりで喋っていた。 「若くて、背が高くて顔もいい。 しかも『マグネイトエステート』の御曹司とくりゃ、誰だってヤツを選ぶだろうよ」 ケッと三木さんが吐き捨てる。 聞き慣れた弊社の名前が出てきて、思わずソファーの背に隠れそうになった。
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