最終章 決別と未来

15/34
2613人が本棚に入れています
本棚に追加
/287ページ
曖昧に笑って断る。 「少しでも悪いなら早めに病院に行ったほうがいいぞ」 「そうですね。 でも、大丈夫ですから」 なんとなく原因に心当たりがある。 しかしまだ確定させるには時期が早いので、もう少し言わないでおきたかった。 その日は砺波さんが所属している事務所で、右田課長――右田さんとの話し合いの場が持たれていた。 「あれは無理矢理ではありません。 彼女も気持ちのうえでは同意していたはずです」 すっかりやつれ、こんな状況になっているというのに右田さんはまだ、一士本部長を庇うんだろうか。 彼は子会社のマンション管理会社へ出向させられ、酷い扱いを受けていると聞いていた。 「右田さんは一士本部長に命じられて、させられたんですよね?」 私の問いで彼は一瞬、身体を強ばらせたが、すぐに首を激しく横に振った。 「違います。 私の意志でやりました。 全部、私の一存でやったことです」 なぜこんなに、彼は一士本部長を庇うんだろう。 誠実な彼らしくない言動は、私を戸惑わせるばかりだった。
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!