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「私はF級冒険者のアンブレカ。 多くの冒険者の中でもF級は最下級なのです。 そして、私はコミ症でパーティーに入るとか無理無理無理。 そんな私ができる冒険者ソロ活動と言えば、簡単な害虫駆除や簡単な人助けとか簡単な荷物配達とか近場で安い薬草やキノコ採取とかくらい。 だいたいは町から近い森で1人でもくもくと安い薬草や安いキノコとかを採っているの。 高い薬草や高いキノコとかって、危険なモンスターが住んでたりする秘境の奥地とかにあるんだよ。 そんな私の1日の稼ぎは5000エンくらいかな。 悪天候とかで働けない日もあるから、だいたい1ヶ月の稼ぎは10万エンくらい。 冒険者ギルドが経営している宿泊施設に住んでいて、私はコミ症なので月額5万エンの個室を借りているの。 5人用とかの大部屋ならかなり安いんだけど、私はパーティーに入ってないし相部屋とか無理無理無理。 食事無しで月額5万エンの宿泊費だから、貯金なんて少ししかできないのよね。  まあ、こんな文句をキノコに言っててもしかたないんだけど、さて、休憩は終わりっと。ん?」 休憩中にキノコに愚痴を聞いてもらって仕事を再開しようとしたら、見たことない物を発見した。 何だろ、あれ。 他の冒険者が落としたんだろか。 でも、あんなの見たことないし。 でも、冒険者ギルドに落とし物で届けたら、落とし主からお礼で1000エンくらい貰えたりして。   「1000エンあればスイーツが食べれるよね」 私の稼ぎでは年に数回しか食べれないスイーツを夢想しながら、私は落とし物を手に取った。 高価なマジックアイテムならそもそも落とすことはないし、呪いのアイテムなんてこんなところに置いておかないよね。 「たぶん普通の落とし物だよね」 『助けてくれ』 「え?」 誰か近くにいるの? 『私は君が手にしている傘だ』 「えっ!? これが喋ってるの? ああっ! 話せるマジックアイテム!? ってすごく高いよ!」 『もうすぐ私の貯雨がゼロになる』 「え?」   ちょあめ? って? 『貯雨がゼロになると私は死んでしまう』 「ええっ!?」 マジックアイテムって死ぬんだ。知らんかった。 『もうすぐ雨が降る』 「えっ?」 『雨が降ってきたら私を開いて雨を受け止めてくれ。もう話すのは限界だ。私は生命維持のためスリープモードになる。頼んだぞ』 「えっ、ちょっと」 『……』 「マジックアイテムさん」 『……』 曇っているけど、そんな大雨が降る感じではないし。でも、雨が降るのか。 濡れるのは嫌だよね。 でも、このマジックアイテムは開いて雨を受け止める物なのかな? どうやって開くの? 使い方くらい言ってから眠ってよね。 話せるようなすごいマジックアイテムなら、乱暴なことをしても壊れないよね? 開くのに高度な魔法詠唱とか高価な魔石とか必要だったりしたら私にはどうしようもないけど。 「ちょっとやってみて無理なら冒険者ギルドに届けよう。うん」 すごいマジックアイテムなら、落とし主から100万エンくらい貰えたりして…… ……100万エン……10年間はスイーツ食べ放題。 ……うん。 変なことして壊す前に冒険者ギルドに届けよう。 うん、それが最善だよ。   「あれ? 足が動かない」 …… マジックアイテムを地面に置く。 足は動いた。 マジックアイテムを拾う。 足が動かない。 えー!? マジックアイテムが目を覚まさないと持ち運びできないの?   そんな仕様なの?   私はいろいろやって、なんとかマジックアイテムを開くことに成功した。 「これでいいんだよね?」   確かにこれを持ってたら雨が降っても私は濡れないかも。 小雨が降ってきた。   「雨を受け止めてたらマジックアイテムさんは目を覚ます、よね?」 はじめは小雨だったけど、しばらくするとまあまあな雨になった。   「うわー、このマジックアイテムがなかったらびしょびしょだったよ」 『うむ。貯雨が1%になった』 「あ、起きた」 『うむ、助かったぞ。君は命の恩人だ』 「いや〜、それほどでも」 さて、冒険者ギルドに届けよう。 「マジックアイテムさん」 『……』 「ねえ、マジックアイテムさん」 『私に言っているのか?』 「うん」 『私の名前は、そうだな、雨傘かアンブレラか。好きに呼んでくれ』 「ソウダナ=アマガサカアンブレラカさん?」  『……レインと呼んでくれ』 「うん。レインさん」 『レインでいい』 「私はアンブレカ」 『ふっ。アンブレラがアンブレカに助けられたか』 「えっ?」 『アンブレカ』 「はい」 『私を冒険者ギルドに届けるつもりだな』 「眠ってたのに聞こえてたの?」 『まあな。私の所有者はいないぞ』 「えっ?」 所有者が所有権を放棄してここに捨てたの? もったいないな〜。 『アンブレカ、私の所有者になれ』 「うん。売っていい?」 『……私をいくらで売るつもりだ』 「えっと、貴族様とかだと1億エンくらいで買ってくれないかな?」 『私を所有したらS級冒険者になれるが』 「私、F級冒険者だけど」 『違う。冒険者最高峰のS級だ』 「ええっ!? F級冒険者の私がS級冒険者に?」 『私の能力をうまく使えば、だがな』 「レインさんを使うのに高度な魔法詠唱や高価な魔石とかいる?」 『ん?』 「私はすごい魔法とか使えないし、高価な魔石なんて買えないよ」 『私に必要なのは雨だけだ』 「レインだけに?」 『そうだな』 「もしかして、レインさんに雨を当ててたらいいってこと?」 『そうだ。私を開いて所有者が手にしている必要があるがな』 「なるほど」 じゃあ、何日も雨が降らないとレインさんは死ぬのか? 「レインさんを川に落とすとか水に濡らすとかはだめなのかな?」 『空の雲から降ってくる雨でないと無理だ』 「面倒だね」  『そのような仕様だからしかたない。人間も生命維持に飲食が必要だが何でもいいわけではあるまい』 「えっと、確かに」 毒キノコとか毒草とか食べれないもんね。 「もしかして、雨以外の水とかレインさんにかけると死んじゃう?」 『それはない』 「そっか」 雨以外の水はレインさんには毒かと思ったよ。  
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