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「町の近くの森に薬草やキノコを採りにきたF級冒険者の私はマジックアイテムを拾ったんだ。
なんと、そのマジックアイテムは所有権フリーだったんだよ。
「私の所有者はいない」って、そのマジックアイテムが言ったから間違いない。
冒険者ギルドなら所有権を調べれるから調べてもらおうか。
本当は誰かの所有物なら私は泥棒になってしまうから。
普通、高価なマジックアイテムは所有権を登録してて、冒険者ギルドでも調べれるんだよ。
逆に言えば所有権登録してない落とし物のマジックアイテムは拾った人の物になるってこと。
私が拾ったマジックアイテムは「レインと呼んでくれ」って。
会話ができるマジックアイテムってすごく珍しいんだって。
そんなマジックアイテムの所有者はすごく高貴な人かS級冒険者くらいだよね。
レインさん、すごいんだ。普通、マジックアイテムを使うには魔法詠唱や魔石とか必要なんだけど、レインさんには必要ないんだ。
空から降ってくる雨を貯めてエネルギーにしてるんだって。
レインさんを使うのに難しい魔法詠唱を覚えなくてすむから助かるよ。
魔法詠唱って、ただ呪文を言うだけではだめで正確な魔法陣をイメージしながら言わないとだめなんだ。
魔法陣を正確にイメージするのは難しくて、高度な魔法になるほど魔法陣は複雑怪奇になるし。
使える魔法にも特性があって、その魔法に対する特性がないと使えないし。
私は100キロくらいの物をなんとか持ち歩けるくらいに軽くするくらいの魔法しか使えないんだ。
あ、いちおうはこれでも冒険者だから、この森の中に出るモンスターくらいには勝てる身体能力はあるよ」
『そんなキノコにそんな話をしてなんの意味がある』
「……聞いてたんですか」
レインさん、だいたい寝てるし。
スリープモードだって。
無駄に貯雨エネルギーを使わないようにだって。
別にキノコと話をしてもいいよね。
キノコはなにも言わないけれど。
『トレーニングはちゃんとやったか?』
「やりました」
『私を触ってみろ』
「え?」
『嘘を言っていたらわかるからな』
「はあ」
嘘なんて言ってないけど。ちゃんと指示されたトレーニングはやったし。
地面に置いてあるレインさんを触った。
『ちゃんとやっているな』
「嘘なんて言いませんよ」
どのような仕組みかわからないけど、レインさんを触ったら私がトレーニングをちゃんとやったかわかるらしい。
『真面目なことは良いことだ』
「ありがとうございます」
『この1ヶ月、私が指示したトレーニングを真面目にしたようだな』
「はい、頑張りました」
『うむ。少しでも手を抜いたらお別れだった』
「え?」
『貯雨がある程度以上なら私は自力で移動できるから別の所有者を探そうと思っていた』
「なるほど」
さいですか。
『アンブレカ、合格だ』
「ありがとうございます」
試験を受けたつもりないけど。
『そして君はもうB級冒険者レベルの身体能力になっている』
「え?」
この1ヶ月間のあのトレーニング内容で?
あれくらいのトレーニングで?
いや、かなり頑張りましたけど。
いやいや、おかしくない?
あれくらいのトレーニングを1ヶ月でB級冒険者になれるなら、みんな1年でS級になれるよ。
『君は私の真の所有者になったからな』
「はあ」
意味、わかんない。
所有権を認めるのは王国の役所なんだけど。
『先ほど君が私を触った時に、君の身体能力を限界まで上げておいた』
「え?」
そうなの? いや、まったく感じないけど。
別に筋肉モリモリとかなってないし。
『今の私は100キロはある。片手で持ってみろ』
「はあ」
100キロを片手でって。そんなん無理に
「あ、そんなに重くないかも」
『3キロくらいに感じるはずだ』
「うん、そんな感じかも」
これくらいなら何とか持ち歩けそう。
B級冒険者のパワーでこれなら、S級冒険者のパワーってどんだけだろ。
『言っておく』
「え?」
『日々のトレーニングをさぼると身体能力は落ちていくからな』
「あ、わかりました」
で、もっとトレーニングを頑張れば私はS級冒険者になれる?
『アンブレカ、残念だが君の身体能力はA級以上のレベルにはならない』
「え?」
『君の遺伝子を解析した結果だから間違いない』
「そう、なんですか」
イデンシってなに?
ま、まあ、B級冒険者レベルの身体能力でもすごいからいいけどね。
『許可する』
「え?」
『森から出ることを許可する』
「あ、ありがとうございます」
でも、森から出てやることってあったかな?
レインさんが無料で食事は出してくれるし、レインさんを開くと雨風寒さ暑さは防いでくれるし。
汚れた服や身体はレインさんがきれいにしてくれる。
病気になったらレインさんが治してくれるそうだし。
新しい服や手袋、靴とかもレインさんが出してくれるし。
あれ? 私はこの森に住んでもいいんじゃないの?
「あの、この森にずっと住もうかなー、なんて思ったりして」
『冒険者は定期的にギルドへ活動報告をして確定申告をする必要があるのではないのか』
「あ、そうです。よくご存知ですね」
『まあな』
じゃあ、冒険者を辞めようか。
あ、でも辞めるなら冒険者ギルドで手続きしないといけないのか。
どのみち一度は冒険者ギルドに行かないといけないのね。
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