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私にはどうやら気配を消す隠密のユニークスキルがあったらしい。
ユニークスキルは努力して身につけるスキルと違って、生まれた時から持っている固有の能力なのだ。
そっかー。私は気配を消すことができたのか。
確かに1人でいて「誰も話しかけてこないで〜」とか思っていると、誰からも声をかけられたことないような。
私って、まあまあ美人でスタイルもいいと自分では思うんですけど、ナンパとかされたことないし。
そっかー、気配を消していたからか。
誰も私に声をかけないで〜、私を見ないで〜とかいつも思ってるもんね。
私がいつもうつむいて暗い雰囲気だから、誰も私に声をかけてこないと思ってた。
まあ、極度のコミ症の私にはぴったりのユニークスキルだよ。
あ、コミ症って「コミュニケーションに難がある症状」を略した私が作った言葉なの。
『冒険者を引退して暗殺者にでもなるか?』
「ふへっ?」
暗殺者?
『いや、冗談だ』
「はあ」
暗殺者をやるくらいなら冒険者のほうがいいよ。
『アンブレカ、人は1人では生きていけないものだ』
「そうですか?」
『そうなのだ』
「でも、私はレインさんがいれば1人で生きていけますけど」
『ふっ、甘いな』
「え?」
『明日になると私がマジックアイテムでなくなる可能性はゼロではないぞ』
「え?」
そんなことがあるの?
突然、マジックアイテムがマジックなアイテムじゃなくなるとか。
『この王国にまったく雨が降らなくなり、私が死ぬ可能性もあるからな』
「あっ、本当だ」
貯雨がゼロになるとレインさんは死ぬんだった。
魔法で出す水はレインさんには意味ないしね。
『だから、しばらくは冒険者として働き引退しても困らない貯金くらいしておけ』
「そう、ですね」
うん、貯金はしないとね。
冒険者だったら冒険者ギルドに貯金できるし。
今の私はB級冒険者レベルの身体能力らしいから、今までよりたくさん稼げると思うしね。
よし、明日から稼ぐぞ。
たくさんお金を貯めたら冒険者は引退して引きこもり生活をするんだ。
レインさんがいる限りは衣食住の費用がいらないし、お金は貯まるはず。
「レインさん、食事をお願いします」
『うむ』
今日の晩ごはんはメインをカレーにした。
カレーってすごく美味しいよね。
ひと口にカレーと言っても、たくさんのバリエーションがあるし。
「美味しいー」
食事が終わったら今日の汚れをきれいにしてもらおう。
「ごちそうさまでした。クリーンをお願いします」
『うむ』
クリーンとは、レインさんが私の身体や服とかの汚れをきれいにしてくれることなのだ。
さて、まだ夕方ですけど寝ますか。
私は普通に1日の半分くらい寝る。
暗くなるとやることもないし寝るしかないもんね。
開いたレインさんの下で寝ると、とても快適なのだ。
防音もしてくれるし、温度も快適にしてくれる。
「おやすみなさい」
『うむ』
翌朝。
ふあー、よく寝たよ。
「レインさん、おはようございます」
『うむ』
朝ご飯を食べて少し休んだらトレーニングだ。
すぐに動くとお腹が痛くなるもんね。
腕立てふせ、腹筋背筋、スクワットとか。
スクワットもね、重たい石を持ってやるんだ。
森の中を走ったりもするよ。
さて、トレーニングが終わったから冒険者ギルドへ行こうかな。
なんたって今の私はB級冒険者レベールだし。
B級の依頼を受けちゃいますよ。
・・・・・・
冒険者ギルド
「レイン先生、よろしくです」
『うむ』
私はコミ症で他人との会話が苦手だから、ギルド職員との交渉とかレインさんに任せるのだ。
レインさんを持って窓口へ。
『F級冒険者のアンブレカだ。S級の依頼を受けたいのだが』
「アンブレカさん、普通に話せたんですね」
『うむ。腹話術だ』
「はあ。えっと……これなんかどうです?」
『む? それはF級の依頼書だぞ』
「はい」
『S級を頼む』
「はい、F級の依頼書ですよ」
『違う、S級を頼む』
「S級?」
『うむ』
「えっと、アンブレカさんはF級なのでF級の依頼しか受けれません」
『そこを何とか頼む』
「無理です」
レインさん、S級の依頼を受けたいって何を言ってるの?
受付けの職員さんも困ってるじゃん。
でもそうか。F級はF級の依頼しか受けれないよね。当たり前だった。
ぺこり
頭を下げて冒険者ギルドから出た。
路地裏へ。
『まだ交渉中だったぞ』
「無理だよ」
『そこを何とかするのが私の役目だ』
いや、無理だって。
「レインさん、S級モンスターって倒せる?」
『当たり前だ』
「なら、依頼を受けないでS級モンスターを倒して素材とか売ろうよ」
S級モンスターの素材なら高く高く売れるもんね。
『S級モンスターの素材はS級冒険者が売りに行かないと、冒険者ギルドは買い取りしてくれないぞ』
「あ、そっか」
そうでした。冒険者ランクごとに狩ったり採ったりできる物は決まってるんだよね。
F級冒険者が採ると決められている薬草をE級冒険者が採ったり売ったりすると罰則があるし。
そうしないと、F級冒険者が採った薬草をE級冒険者が奪って売るとかできちゃうから。
とにかく、他のランクの冒険者活動を邪魔したら駄目ってことなんだ。
代わりに売ってくれるS級冒険者の友達なんかいないし。
なんなら友達なんて1人もいないし。
冒険者ギルド以外に売って冒険者ギルドに知られたら怒られるもんね。
試験を受けてB級冒険者になればいいんだけど、試験は半年に1回だし飛び級はないし。
F級の私がB級になるには2年くらいかかるよね。
どうしたものかね〜。
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