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思い出した。 「私がレインさんの所有者になればS級冒険者になれるって言いましたよね?」 『うむ』 「私ってB級冒険者レベルの身体能力が限界なんですよね?」 『うむ』 「それ、矛盾してますよ」 『冒険者の等級試験は身体能力だけではないぞ』 「知ってます」 一般常識試験や面接もあるし、冒険者としての稼働日数やギルドへの貢献度も加味されるし、魔法とかのスキルやユニークスキルも加算されるよ。 『アンブレカはB級レベルの身体能力とユニークスキルの隠密スキルがある。私というマジックアイテムも所有している。S級になれない理由がないと思うが』 「それくらいのアドバンテージでS級になれます?」 『私の攻撃力と防御力だけでもS級になれると思うがな』 そう? 「でも、レインさんの能力だけでS級になるのはなんと言うか」 『アンブレカ、運も実力だ』 「えっ?」 『私の所有者になった。その運も君の実力なのだ』 「うーん」 『S級冒険者になれる素質で生まれるのも運だからな』 「それはそうかもですが」 『それでもズルだと思うならB級でいいと思うがな』  「まあ、はい」 S級冒険者になると有名になりすぎたり、いろいろ面倒そうだし、私はB級冒険者でいいか。 B級冒険者を10年くらいすれば、死ぬまで引きこもりできるくらいの貯金はできると思うしね。 「決めました」 『何を』 「私、B級冒険者でのんびりやります」 『アンブレカがそれでいいなら私に異論はない』 「ありがとうございます」 『S級になれるのに挑戦しないとは、まったくアンブレカは欲がないな』 「はあ」 いやいや、私だっていろんな欲はあるよ。 たくさん美味しい物やスイーツを食べたいし。 あ、太らない程度にね。 レインさん、スイーツは出してくれないんだよ。 「いつか聞こうと思ってたんですが、レインさんはスイーツは出せないの?」 『スイーツは料金が必要だぞ』 「お金を払えば出してくれるの?」 『うむ』 「いくらくらい?」 『安いものから高いものがあるがメニューを見るか?』 「お願いします!」 『うむ』 レインさんがスイーツのメニューを出してくれた。 「うわー!」 なに、これ。 すっごく美味しそうなのがたくさんあるよ。 いちごチョコレートパフェ? と紅茶のセット。 1000エンかー。 それ、私の1日の食費だよ。 でも、今は3食分の食費がいらないし。 それに、町のスイーツ店なんか、小さくてそんなに甘くない焼き菓子と甘くないお茶のセットで1000エンもするし。 甘い物や香辛料って貴重なんだよね。 「いちごチョコレートパフェ、お願いします!」 『うむ』 3分待つ。 この待つ時間って長いよね〜。 よだれが出て困るしね。 いちごチョコレートパフェの料金は、レインさんに預けてある私の貯金から引いてもらおう。 レインさんは異空間にすごくたくさん収納できるらしいから助かるよ。 無くされたら困るけど…… 大丈夫だよね? いちご、チョコレート、パフェ、どんな味なんだろ。 チーン いちごチョコレートパフェが眼の前に出てきた。 宙に浮いてるんだけど、これ、どんな仕組みなんだろ。 まあ、いいけど。 いざ、実食。 きれいなスプーンですくってひと口。 もぐもぐ。 「美味しい〜!!」 なにこれ? 程よい酸味ととろけるような甘さのハーモニー! 冷たくてすぐに溶けるこれも、すごくなめらかで甘くて美味しい。 紅茶も甘くてちょっと苦味で美味しい〜。 このセット、1万エンでも安いと思うよ。 これ、お店ができるのでは。 完食。 「ふー、すごく美味しかったー。ごちそうさまでした。あの、レインさん」 『ん?』 「考えたんです」 『言ってみろ』 「料理やスイーツとかお金を払えばいくらでも出せます?」 『むろん』 「なら、私がお店をやったら儲けるかなって」 『極度の人見知りアンブレカがどうやって』 「あ」 そうだった。私は極度のコミ症アンブレカ。 接客商売なんて無理無理無理。 『まあ、接客対応の店員を雇えばすむ話だが』 「あ、それね」 そっか、何ごとも適材適所だもんね。 私は裏方をやればいいんだよ。 接客は陽キャラを雇えばいいだし。 ……どうやって陽キャラを雇うの? 『商業ギルドへ行ってみるか』 「あ、それね」 その手があったか。 「交渉はレインさんがやってくれる?」 『アンブレカができるのか?』 「そんなの無理無理無理無理無理」 『任せておけ』 「先生、よろしくお願いいたします」 『うむ。で、あの町でやるのか?』 「え?」 『どうせやるなら王族貴族、大金持ちやS級冒険者がごろごろいる王都がいいと思うがな』 「あ、それね」 それはそうだよね。 でも、王都って遠いんだよね。行ったことないけど。 馬車に乗って5日とからしい。 乗り合い馬車に乗っていくのって、極度のコミ症の私には無理だって。 歩いていくしかないのかな。 『アンブレカを乗せて王都まで飛ぶと20%減か』 「え?」 『歩いても馬車でも飛んでもいいが』 「とんでもいいって、空を飛んで行くってこと?」 『そうだ』 「レインさん、私を乗せて飛べるの?」 『飛行モードになればな』 「ひこうモード?」 『私を地面に置け。飛行モードを見せてやる』 「うん」 地面に置いたレインさんが変形した。 「おおっ!」 なんか、かっこいいかも。 なんとなく、どうやって乗ればいいのかわかるし。 これなら空を飛んでも怖くないかも。 レインさんが通常モードになった。 『どうだ?』 「うん、あれなら怖くないと思うよ」 『飛行モードで行くか。早いしな』 「どれくらい?」 『1時間くらいか』 「1時間?」 『数を3600だ』 「3600……えっと、3分が180だから……3分が20回で行けるの!?」 『そうだ』 「むっちゃ早いね、びっくりだよ」 『まあな』 すごいね〜。
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