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王国の地方の町から王都へ引っ越すことを決めました。 王都で商売して稼ぐんだ。 商売に失敗すると冒険者をしないといけないから、冒険者は引退しないでおく。 冒険者は引退したら再登録ができないんだよ。 定期的に冒険者活動してないとランクが落ちてE級からF級になったりするんだけど、私はF級だから下に落ちようがないし、年会費を払えば更新できるし。 人生どうなるかわかんないから保険はかけてないとね。 商売がうまくいかなかったら冒険者に戻るってことで。 生まれて育った町だけど私は孤児で友達とか1人もいない。 引っ越すからとお別れを言う人もいない。 夜になり、私は飛行モードに変形したレインさんに乗る。 これから王都へと飛び立つのだ。 「行きましょう、レインさん」 『うむ』 「ふあっ?」 何かの力でふわっと空に引っ張られる感覚。 空を見上げる。 今日は月がなくて星がとてもきれいに見えるな。 下を見ても真っ暗闇だから怖くない。 すごい速度で飛んでいるはずだけど、まったく音がしない。 レインさんが音を消してくれてるんだろうな。 馬車だと5日はかかるけど、レインさんなら1時間だって。 1日は24時間で、1時間は数を3600数える時間らしい。 王都でどんなお店をやろうかな〜。 そんなことを考えていたら、レインさんが止まって下に降りていく感覚がした。 どうやら王都の近くに到着したみたい。 もう着いたの? 森の中へレインさんは着地したようだ。 『降りていいぞ』 「はい」 飛行モードのレインさんから降りると、レインさんは傘のクローズモードに変形した。 レインさんは傘という種類のマジックアイテムなんだって。 私はあんまり漢字を知らないから、傘なんて字は知らなかったよ。 王都にはレインさんみたいな傘のマジックアイテムがあるんだろうか? 会話ができる傘はレインさんだけかもだけど。 『貯雨を20%使ったから、次の雨が降るまでこの森にいるからな』 「あ、はい」 王都で何があるかわからないし、エネルギーは100%がいいよね。 野宿でもレインさんが一緒なら高級宿みたいな快適さだしね。 虫に刺されたりする心配もないし、森の中のモンスターを警戒しないで寝てるし。 F級モンスターしかいない森だと思うけど、眠ってる時や寝起きに襲われたらF級モンスターでも怖いもん。 3日後、まとまった雨が降りレインさんの貯雨ゲージも100%になった。 『まずは登録だな』 「ですね」 とりあえず……とりあえずじゃなくて、最優先でレインさんを私の物だって登録しとかないとね。 盗まれたりしても、私のだって証明できないもんね。 レインさんは袋に入れて、隠密スキルでそ~っと王都へ入ったよ。 で、役所はどこなんだい? ……王都、広すぎ。 どこに何があるのかわかんないよ。 冒険者ギルドも商業ギルドもわかんないし。 歩き回り、なんとか役所を見つけたよ。 西の役所みたい。 西ってことは王都の東西南北に1つずつ役所があるのかな。王都って広いもんね。 役所の中にそ~っと入った。 レインさんを袋から出す。 「よろしくお願いいたします」 『うむ』 レインさんを持って総合受付へ。 ぺこり 「はい、ご要件は」 『マジックアイテムを登録したいのだが』 「……え?」 『どうした』 「あ、若い女性だと思ったら声が渋い男性だったので。あ、失礼しました」 『腹話術をしているからな』 「……もしかして、会話ができるマジックアイテム?」 『いや、腹話術だ』 「……いえ、どう聞いてもマジックアイテムが話してますよね」 『わかるのか?』 「持ち主の女性、まったく口が動いてませんから」 『なるほど』 「持ち主さん、話せないとか?」 『まあな』 「あの、会話ができるマジックアイテムなら登録は不要だと思いますが」 『そうなのか?』 「担当窓口をご案内しますが、私も総合受付としていろいろ勉強してますので」 『なるほど』 マジックアイテムを登録してくれる窓口を教えてもらい、その窓口へ。 ぺこり 要件を説明するレインさん。 「会話ができるマジックアイテムなら自ら所有者を言えますので登録は不要ですけど、どうしても登録したいならやりますが」 『いや、不要だ』 「そうですか」 『失礼する』 ぺこり。 流石は王都の役所だね。会話ができるマジックアイテムを見てもそんなに驚かないし。 そっか、マジックアイテムが会話できるなら登録不要なのか。 確かに、マジックアイテムが所有者を明言できるもんね。 『私の所有者はアンブレカだ』って。 でも、これで堂々とレインさんを持って歩けるよ。 いちいち袋に入れて出してって面倒だもんね。 レインさんを手に持ってないと会話ができないし。 「レインさん、お疲れ様でした」 『うむ』 「登録料もいらなくて助かったよ」 『そうだな』 レインさんはいろんなことを知ってるけど、会話ができるマジックアイテムは登録不要って知らなかったんだね まあ、何でも知ってたら神様だし。 そう言えば、登録料金っていくらなんだろ? まあ知らなくていいか。マジックアイテムを登録することはないと思うしね。 「次は商業ギルドですね」 『うむ』 商業ギルドの場所なんて知らないけど、通行人とかにレインさんが聞いてくれた。 S級冒険者ですか? と逆に聞かれたりしたけど。 私は冒険者の格好をしているし、どう見ても王族貴族ではないし、会話ができるマジックアイテムなんて持っているからS級冒険者ですよねって。 『実力的にはS級なのだが、持ち主が面倒だからと昇級試験を受けないのだよ』ってレインさんが答えるし。 まあ、嘘ではないから文句は言えないけど。
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