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お店の名前って悩むよね。 さんざん悩んで「アンレ」に決めました。 私のアンブレカとレインさんでアンレ。 4人用のテーブル席が2つ、2人用のテーブル席が5つの小さなお店。 でもいいんだ。ここからスタートしていつかは大通りに大きなお店を持つのだよ。 ふふふ。 接客をしてもらう陽キャの店員さんは商業ギルドで紹介してもらえた。 16歳の女性でダリアさん。 レインさんがいろいろ説明してくれた。 『ダリアさん、質問はないかな』 「はい、頑張ります」 『うむ。この店で働くのを選んだ理由を聴いてもいいかな』 「はい、お給料がいいのと、アンブレカさんが有名な女性冒険者だからです」 『うむ』 私、そんなに有名なの? 「攻撃魔法が得意なA級冒険者にも余裕で勝てるとか」 『ふむ』 「そんなすごい人が店主なら、怖いお客さんとか怖い人たちとか来ても大丈夫だと思いました」 『なるほど』 飲み屋じゃないよ、アンレは。 そんな怖い人たちが来るかな? 「アンブレカさん、レインさん、よろしくお願いします」 『うむ、よろしく頼む』 私も頭を下げる。 ぺこり 美味しい食事とスイーツのお店 アンレ お店の前には食券販売機なるものが置いてあります。 これはレインさんが100万エンで出してくれたマジックアイテムなんだ。 マジックアイテムのレインさんがマジックアイテムを出すって、ちょっと面白いよね。 いろんなメニューが切り替わるようになっていて、注文したい物をタッチしてお金を入れたら注文完了なの。 会計係も不要になるから100万エンは安いよね。 この食券販売機は役所にマジックアイテム登録したよ。 誰かに「このマジックアイテムは俺のだ」とか言われたら困るもんね。 王都の西エリアの役所だけに登録するなら10万エンだった。 これが王国内の主な役所やギルドに登録するとなると1億エンが必要なんだって。 私も従業員のダリアさんも、何か飲食したい時は食券販売機で注文するんだ。 今日から私の食事もお金を取るんだって。 ずっと無料だと思ってたよ。 「レインさんってすごいですね」 『うむ』 「そんなすごいマジックアイテムを所有しているアンブレカさんはもっとすごいです」 ぺこり 『さあ、美味しい食事とスイーツのお店、アンレのオープンだ』 「はい」 うん 冒険者ギルドでやった賭けの決闘で、私は有名になっているらしい。 そんな冒険者が始めた飲食店だと、まあまあのお客さんがやってきた。 ダリアさんが食券販売機やメニューの説明をしたりしてくれる。 私はレインさんが出してくれた料理やスイーツとかをお客さんのテーブルに置くだけ。 ぺこり 『ごゆっくりどうぞ』 皆さん、びっくりするよ。 料理やスイーツとかがマジックアイテムから出てきて空中に浮かんでるんだから。 どんな料理でも注文して3分で出てくるから、満席になってもそんなに待つことはないし。 おかげさまで、多くのお客さんが来てくれるようになった。 アンレの料理やスイーツは、王都のどの店でも食べれないと思うしね。 似たようなのがあってもすごく高いと思うよ。 雨が降る日は臨時休業になることもある。 レインさんが貯雨しないといけないから。 夜の始まりの鐘が鳴ったらラストオーダーだ。 最後のお客さんが帰り、私とダリアさんも晩ごはんを食べる。 「美味しかったー。ごちそうさまでした」 『うむ』 ごちそうさま 店内を掃除したり片付けも終わった。 『さて、ダリアさん。送っていこう』 「あ、いえ、大丈夫ですよ」 『もう暗くなっている。それにアンブレカがトレーニングに行くついでだ』 うんうん 「じゃあ、すみませんがお願いします」 『うむ』 うん 「S級冒険者レベルの防御力を持つアンブレカさんに送ってもらえたらすごく安心です」 『うむ』 いやいや その防御力はレインさんだけど。 ダリアさんの住む家はお店から歩いて10分くらいだった。 「ありがとうございました」 『うむ』 ぺこり さて、ランニングをしますかね。 レインさんを手に持ち、王都の中をランニングしながら考える。 私は起きているあいだ、3キロくらいに感じるレインさんをずっと片手で持ってるんだよね。 これだけでもかなりの筋トレだよ。 それにしても、今日もお客さん多かったな。 お店の家賃と保険とダリアさんのお給料。 最低でも月の利益が50万エンは必要なんだよ。 「今日の利益は?」 『5万くらいだ』 「おお、なかなかだね」 『うむ』 原価率50%にしているそうだから、売上は10万エンあったのか。 月に20日の営業だとしても、今日の利益くらいが平均なら私の給料は50万エンだよね。 食費とかいろいろ引いても月に30万エンは残るね。 年間360万エンの貯金ができるとして、1億エンが貯まるのは30年くらいか。 今の私は18歳だから、45歳くらいまで頑張ればあとは引きこもり生活ができるね。 もっとうまくいけば、40歳くらいで引きこもりできるかも。 ぐふふっ。 あ、マジックアイテムも寿命があるんだよね。 死ぬというか使えなくなるというか。 「レインさん、あと何年くらい生きれる?」 『ん? 100年は大丈夫だぞ』 「じゃあ大丈夫だね」 『うむ』   100歳まで生きる人はあまりいないから、私の寿命まではレインさんは生きるってことだ。
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