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朝方に意識をなくしたはずなのに、目覚めたのはいつも起きる時間だった。
腕の中に目を向ける。凪さんはすでに起きていて、至近距離で視線が絡んだ。
顔を真っ赤にして飛び起き、凪さんはベッドの上で土下座した。
「ごめんなさい! 昨日はみっともないところをお見せして」
俺も慌てて起き上がり、凪さんの身体を起こした。
「いや、俺のほうこそカッコ悪い姿を晒してしまいました。すみません」
「全然カッコ悪くなんてなかったです! ……あの、昨日の話をしてもいいですか?」
番になるかどうかという話だろうか。
「はい、ゆっくり話したいから、先に職場へ連絡してもいいですか? 有給を取ります」
「いえ、ごめんなさい。お仕事ですよね。帰ってきてからで大丈夫です」
「気を使わないでください。有給は全然使っていませんし、理解ある会社なので、お付き合いしている方がヒートだと言えば、大事な人を放ってまで会社に来るな、と言われてしまいます。俺じゃなきゃダメな仕事なんてありません。でも、凪さんは俺じゃなきゃダメですよね?」
「はい、海斗さんじゃなきゃダメです」
柔らかく笑った凪さんにホッと胸を撫で下ろす。
「はぁー、良かった。俺じゃなくてもいいって言われたらどうしようかと思いました。俺じゃなきゃダメだって言ってくださり、ありがとうございます」
スマホを取り出して有給を取りたい理由を上司に告げれば、26年間恋人がいないことを酔った勢いで話してしまったせいか『大切にしろよ、絶対に会社に来るな!』と言われてしまった。
先に着替えをさせてもらい、干しっぱなしにしていた洗濯物を回収し、コーヒーを淹れて並んで腰掛ける。
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