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「あの、やっぱり僕は海斗さんと番になりたいです」
「ヒートは終わっていますか?」
「終わっていませんが、薬が効いているので今は正常な状態です。だから海斗さんさえ良ければ、次のヒートではなく薬が切れたら番にしてくれませんか?」
凪さんの手を両手で包み込むように握る。
「凪さんの気持ちは嬉しけど、まだ番になれません」
「……どうしてですか?」
「きちんとけじめをつけてから番いになりたいです。凪さん、俺と結婚して頂けませんか?」
目を見開いた後、凪さんは何度もコクコクと頷き、俺にしがみついてきた。
「海斗さんと結婚したいです。よろしくお願いします」
大きく息を吐き出す。凪さんの背に腕を回した。
「断られなくてホッとしました」
「断るわけありません。僕は海斗さんが好きなんですから」
「でも、俺は今まで恋愛経験がなく、どうしたらいいかとか分からないんです」
凪さんが身体を離し、目を丸くして俺を見上げる。
「恋愛経験ないんですか? 僕が初めての恋人ですか?」
……凪さんには言っていなかったか?
顔へ熱が一気に集まる。
「はい、ありません。凪さんに嫌われたくなくて、凪さんの前ではカッコつけていました。でも心の中は余裕なんてなく、毎日凪さんにドキドキしっぱなしです」
柔らかく笑って、嬉しいです、と抱きつかれる。
「海斗さんは大人だし、僕だけがドキドキしているのかと思っていました。だから昨日は抱いてほしくて、抑制剤持っていたけど飲みませんでした」
「え? そういう理由だったんですか?」
心臓が痛いくらい鳴り響く。ポケットに入っているのに、何で飲まなかったのだろう、と思っていた理由が分かった。
「でも、抱いてもらうより大事にされているということが分かって嬉しかったです。僕も結婚してから番になりたいと思いました」
「ヒート中は薬を飲みますよね? 副作用はありますか? 昨日はすぐに眠ってしまいましたよね」
「ヒートで体力を使ったから昨日は早く寝てしまっただけです。僕は比較的副作用は軽くて、少し眠くなるくらいです。風邪薬を飲むのと同じ感じだから大丈夫ですよ」
「分かりました。それでも辛かったら教えてくださいね。ヒートが終わったら両親に報告して籍を入れましょう」
母には手を出すな、と言われているが、筋を通して責任が取れるのならば許してくれるだろう。大学生活を楽しんで欲しいから、4年間は2人っきりの生活を楽しもう。
「はい! ……あの、お願いがあるのですがいいですか?」
「何でもおっしゃってください。結婚するなら言いたいことを言い合える仲でなければいけませんから」
「僕に敬語やさん付けをやめて下さい」
「分かったよ、凪くん。俺にも敬語やめてくれる?」
「うん! 海斗さん、まだお願い聞いてくれる?」
「もちろん」
「もっと強くギュッてして」
こんな可愛いお願いならいくらでも叶える! 力いっぱい抱きしめると、うっ、と凪くんが呻いた。
「ごめん、力加減を誤った」
「ううん、嬉しかったからいいの! ギュッてして」
先ほどよりは弱い力で凪くんを抱きしめる。凪くんの腕も俺の背に回った。
「海斗さん、だーい好き!」
甘えた声で囁かれ、また鼻血が出るかと思って思わず上を向いた。
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