喰らうひと

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喰らうひと

 夜、つんざくような悲鳴で目を覚ました。  わあわあと泣き叫ぶ声は、隣の子ども部屋から聞こえてくる。時計を見ればまだ夜半を過ぎた頃合いで、自身も床に入ったばかりである。  怖い夢でも見たのか、それか足でもつったか。  ため息まじりに様子を見に行くと、真っ暗な部屋の中、子どもは割れんばかりに泣き叫んでいた。 「どうしたのヨシちゃん、そんなに泣いて」  声をかけながら、ぱちり、電気をつける。白い白熱灯の光に一瞬目がくらむ。次いで飛び込んできた赤色に、思わず目を疑った。 「お母ちゃん……いたい……いたいよぉ……」  子どもは布団の上で、左手をおさえて踞っていた。白いシーツに、点々と赤い模様が散っている。子どもの手は真っ赤だった。 「ヨシちゃん!」  今度は自分が悲鳴を上げる番だった。慌てて駆け寄る。子どもが「痛い痛い」と抱える左手を見て、言葉を失った。  子どもの左手の小指が、根本から引きちぎられるようにして無くなっていたからである。
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