ゴミはゴミ箱に

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「地球は俺のごみ箱だ」 と、言って綺堂令は噛んだガムを道路に吐き捨てた。  その日もいつもの帰り道、運転席から飲み終えたペットボトルを捨てた。すと、目の前に急に人が立ちはだかった。 激しい急ブレーキの音と何かを踏んだ音がした。 「やっちゃったか?」 確認の為ハザードランプを点けて車から降りた。突然腕を掴まれた。 「IDカード」 言われたまま渡した。何故か逆らえない空気が漂っていた。 「君、ごみの不法投棄。前歴長いね」 「そんなことわかるんですか?」 「すべてデータに入ってるからね」 「それより俺人を引いたのかと思って気がかりなんだけど」 「引いたのは、君の捨てたペットボトル」 覗いてみると確かにへしゃげたペットボトルだった。 でもおかしいな、どうして自分の所に戻ってきたんだ。 「今日四月一日。不法投棄厳罰法が実施された。よって君は罰せられるんだよ分かったかな」 訳の分からぬままバンに乗せられた。先客が五人いた。 「君たちマレーシア知ってるよね。あの国はガムを持ち込むだけで罰せられるんだ。約百万円。そしてキャンディーの包み紙を捨てて初犯で約三万円。そしたらその後はわかるだろう。日本も見習うべきとなったんだよ。でも君たちラッキーだったよゴミ拾いだけで終わるからね」 よく話す運転手だ。 携帯を出すと同乗していた人に取り上げられた。落とすと大変だから預かるよと言うことでほかの五人も首を振っていた。 一人、二人と降ろされ自分が最後となった。  交通量の多い場所で中央分離帯に捨ててあるペットボトルやゴミを拾う事だった。 「これ着てね」 渡されたものは目立つ蛍光色のベストだった。 「はい、行って」 背中を押された。否応なく走ってごみを拾って戻る。何回か繰り返せばコツが掴めてくる。 「終わっていいよ」 ベストを脱いで渡した。バンのなかは自分一人だった。 「ほかの人は」 「軽い罪だから終わったよ。君が一番重かったからね。もう真っ暗さ」 「もう、ごみは捨てるなよ」 運転手が肩を叩いて言った。 携帯を手に自分の車に向かって歩いた。 「何かワイパーに挟んである」 街灯の明かりで『エイプリルフール』と書かれた紙だった。
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