早くも解禁

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早くも解禁

 警察庁祓魔課の海原 姫と風獣と深海の姫編新装版  ケニー・バレルの、たおやかなラウンド・ミッドナイトのギターの音が響いていた。  勘解由小路降魔(かでのこうじごうま)の寝室で、いつものように国辱夫婦は、川の字でイチャイチャを繰り返していた。  夫婦の間で、クークーと寝息を立てているのが、このほど生まれた次男の(ベリル)だった。  緑をまたぐように首を伸ばした勘解由小路が、妻の真琴とチュッチュしていたという。 「んー♡ああ可愛いなあ真琴は♡んちゅ♡ペロ♡もう食べちゃいたいくらいだ♡」 「いやん♡緑くん、まだ生まれて1ヶ月未満ですよ?♡」 「生後2日で子育てしようって、誘ってきたのは誰だったかなあ?♡ああママ乳パンパンで♡」  デボラマーキーの授乳ブラをペロンと捲って、おっぱいに吸い付いていた。 「んきゅううう♡さあ、それは、多分きっと、きゅ♡私だと思いまちゅ♡我慢出来なくなっちゃんでちゅもの♡」  緑をベビーベッドに移動させ、勘解由小路を抱いて、新しく設えられたベッドにうちゃった。  バインバインと、勘解由小路は弾んでいた。  新しいベッドは、陸自が開発した超剛性のグラスファイバーシャフトが付いた豪華なベッドで、事実、床から少し浮かんでいた。  ハンギングチェアーというより、ハンギングベッドだった。  そのシャフトのカタログスペックでは、重量は400キログラムすら支えるという話だった。 「うわああい♡弾みながらぐるぐる回っちゃうなあ♡陸自が提供した最新型のベッドだし。ようやく明治期のアンティークから現代にタイムリープした感じだ♡トキの奴、この前のお詫びのつもりかな?」  妖魅ババア乱舞事件は、皇居を舞台にした恐ろしい事件だったのだが、愛に奮い立った真琴の異常な脚力で、皇居はめちゃくちゃになったのだった。  同じく、その中心にいた田所紀子親王は、無事家族と再会の儀を済ませ、このほど赤坂御所に引っ越したという。 「ところで、これは何でしょう?」  寝室の壁に、別の土蜘蛛が拘束されていた。  勘解由公房(かでのこうぼう)製のロープが、猿轡にされていた。 「まあ、例の羅吽(らごう)が差し向けた奴だった。あれだ、大林製薬のタブレットを飲んだ人間が、病気になったって騒ぎになってるだろう。まあ石山さんが薬を開発したからもう平気だし、これこの通り犯人はふん縛っている。あれだな、こないだから完全に羅吽はミスター・Xと化してるな。毎週虎の穴から妙なのを連れてくるだけのキャラに」 「ああん♡コッソリおっぱいをムニムニされていましゅ♡降魔さんに触られて、真琴は喜びの声を上げて、その心は第七銀河のかなたに――うるさいですよ?」  モノクルを外して睥睨し、妖魅は砂と化して散っていった。  じゃあ子作りしようてなったのだが、壁掛けのモニターが、着信音を立てた。  ん?そこで、勘解由小路はリモコンのスイッチを押した。 「寝室はダニンガンだぞお前。空気を読め島原馬鹿」  モニターに、巨大な男の顔が映っていた。 「やかましい勘解由小路馬鹿。緑君は元気か?」  祓魔課長にして親友の台覧があった。 「今ベビーベッドにいます。これから、子作りをしようと思っていたんですが。課長、はっきり申し上げて、邪魔です」  寝室内は、結構冷えていた。 「少しだけ待って欲しい。確かに君の育休については、流石に認めざるを得んが、勘解由小路、お前の育休を認めた覚えはない。いい加減、庁に顔を出したらどうだ?」 「ああん?登庁以前に、大事なことがあるだろうが。ああ、その辺の話する前に、子作りムードになっちゃったんだ。真琴先生もしばらく育休だし、じゃあ、いっちょ俺が動いてやるか。って訳でー。登庁は今日はなし。な?」  モニターの馬鹿が、嫁に覆いかぶさって通信が切れた。  ベッドが変に弾んでいた気がしないでもなかった。 「うん。妊娠出産凄く大変だったろう。あとは俺に任せて、ゆっくり休んでくれ」 「キュン♡キュン♡キュウウウウウウウウ♡」  激しく揺れるベッド。グラスファイバーシャフトは、見事な性能を発揮していたのだった。
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