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クソ授業
エロ妻までいた、授業が唐突に始まっていた。
豪華なリクライニングチェアにふんぞり返って、おっさんは座学を始めたのだった。
「何だな、まあこと怪奇事件においては、その方法論が秘されているということがある。それを先走って知っとこうというのが、この祓魔座学になる訳だが。ああ真琴、さっきからベッタリ抱きつかれてだな?」
椅子に座った教員の膝の上に、エロ妻が座っていた。
「眼鏡をかけた、知的な降魔さんがカッコよすぎるんでしゅもの♡」
エクステのお下げの先で、首筋をこちょこちょしていた。
「あ、緑くんおっぱいですね?」
やおら、授乳を始めていた。
「赤ん坊がいれば、授乳はしょうがないんだ。デボラマーキー着てるしな。じゃあ始めよう。今日は日本の呪法を学ぶぞ?仏教の呪術的側面は、主に最澄と空海から始まったと言っていい。真空の天最と覚えておきゃいい。特に最澄が唐から持ち帰ったのは、円、密、禅、戒の四宗だ。天台宗はそんなに面白くない。光明真言の「べいろしゃのう」を、そのまんまビローシャナと読むくらいだ。むしろ真言の方が面白いというのは、俺の個人的な感想だ。さて、真言密教に視線を移すと、外せないのはタントラ経由で伝わった立川流だ。真言密教立川流は、仁寛によって始まり、南北朝を経て文観によって大成した。仁寛はちなみに、のちに蓮念と名前を変えた。要するにノイエ・ラントの支配者になって、宇宙専制国家に忠誠を誓ったって話でもある。要するにノイエ・ラントの支配者になって、例の帰らなかった男を取り逃がした訳だが、連中に喧嘩を売ると酷い目に遭うって話は、これは誇張はあっても虚構ではないというあれだ」
銀河の歴史に、またけったいなページ増えてんだけど。
「立川流に関しては、詳しくは漫画でも読め。エロいから。相貌失認の人妻を襲う死霊。井戸に放り込まれた死体。後半加筆修正されまくって、最早別の話と化した傑作中の傑作だ。要するにヤーイヤーイヤートコセーだ」
「はい先生。それでは終わってしまいます。話が色々。それから授業で嘘やめろ。ありがとうございました」
代表して私が言った。
「んー。まあいっか。キリカソワカって荼枳尼の真言唱えてたんだが、あのジジイは。俺はどっちかっていうとギャカニエイソワカの方なんだが。いいや。立川流ってのは、淫祠邪教の烙印を押されたってことになってるが、元々がタントラ系の密教だしなあ。実はそうではないという意見もある。邪教のイメージで最も強いのは、やっぱり髑髏本尊だろうな」
はじめ人間ギャートルズみたいな骨を拝む、原始人みたいなのを黒板に書いていた。
っていうか絵が下手だわこのおっさん。
骸骨にたらこ唇書くな。
「こないだの電霊事件の時に、荼枳尼の須弥壇見たよな?まあ要するにそういうアプローチをしてる奴が使えば、タントラだってただの邪教になってしまう。立川流には、髑髏自体を呪法に組み込むメカニズムが盛り込まれてるんだが、まあ魂魄理論とか長くなるからまた今度だ。それで、拾った髑髏に、金箔とか貼って肉付けしていくんだが、和合水を使うというのがある。で、和合水って何だ?」
黒板に、でっかくエロ水って書いてあった。
「知ってる奴いないか?!和合水って何だ?!」
エロ水をグルグル円で囲ってセクハラ親父が聞いた。
そこで、私がキレた。
「知るかああああああああああああああ!!このエロオヤジ!ハアハアしてる嫁にでも聞けええええええええええええ!あんたの嫁の脱ぎかけた紐パンの中に滲んでるあれよ!それと今朝お前が嫁にぶち込んだあれよ!それの混合水よ!」
要するに、非常にまっすぐな、教員から生徒に対するセクハラだった。
「ふん。それでは正解はやれんな。じゃあ――勘解由小路?耳元でそっと囁いておくれ?」
いよいよエクステで、耳元をコチョコチョしながら吐いていた。
「はい♡私のアリスちゃんから滲み出る、いやらしい分泌液と、常にアリスちゃんが欲している、ビューってなる熱くてクリャクリャしちゃう素晴らしい赤ちゃんの素でしゅ♡あん♡降魔さんがお腹を撫でていましゅ♡本当にクリャクリャしちゃいましゅ♡」
このクソ教員。教壇前の椅子の上で、嫁生徒と猥語でイチャイチャしていやがった。
「うん正解♡スッキリしちゃった真琴のお腹撫でてみたかったんだ♡ちょっと緑預けてトイレにでも行こう♡」
「キュウ♡紀子さん♡ちょっと緑くんを預かってていてもらえませんか?おっぱいは飲ませてあるから大丈夫です。もしグズったら、これをどうぞ」
赤ん坊と哺乳瓶を手渡された。
「早速紐パンポケットの中に入れられちゃった♡ブラウスのボタン外されちゃって、エッチな黒いデボラマーキー見えちゃって、生徒の何人か立てなくなっちゃっているぞ?要するに、立川流の本質はこれだ。男女交合の先に悟りがある。つまりラブ妻即ち真琴こそが悟りだ。じゃあ俺はトイレで真琴の観音様の納戸神に、和合水を満たしに行ってくる。あとは自習な?ウィキか何かで立川流のこと調べててくれ」
煩悩即悟りという言葉を残して、多層高密度構造の煩悩の塊が、消しゴム一個残して消え失せやがった。
「え?ちょっと!本気かおっさん?!ぎゃあ!この赤ちゃん無言で私のおっぱい弄ってくるんですけど!ボタンを外すなってだから!あれ?!なんかもう首座ってんだけどこの子!」
ん?飯か?じゃあ食ってやろうと言わんばかりの、赤ん坊の姿があった。
エロ夫婦のサボタージュより、授乳皇女の方がよっぽどセンセーショナルだったという。
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