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七月の相模湾
着いた場所は、何と相模湾の熱海サンビーチの一角だった。
確かに季節は7月に入り、季節は夏の様相を呈してはいた。
出かける前に、勘解由小路は寮の一室を破壊し、部屋に引きこもっていたライルを引きずり出したのだった。
何でか知らないが、部屋で可哀想なくらい膝を抱えていたのだった。
私は、誰かが用意した、パレオが付いた水着を着せられていた。
まあ、年相応な(文句あるか)私のバストが、夏の日差しを反射し、健康的な色香があったと思いたかった。
てか、サンビーチまだ海開き前だし。
「お似合いです紀子さん」
「そしてあんたは何を着てんの?!」
勘解由小路真琴は、恐ろしくエロいマイクロビキニを着て現れた。
「モルディブで着ていた、降魔さんのお気に入りです。日差しの下だと、極小のビキニトップが熱を帯びてしまうので、向こうでは専ら付けておりませんでした」
ああ。これがモルディブの時のあれなのか。
やおら、背後からパレオが捲られた。
「ぎゃあああああああああああああ!何すんのよ静也あんた!」
「中がどうなってるのか気になった。履いててよかった。下を」
「当たり前だああああああああああああああ!シャツを着ろ!腹筋隠せお前は!」
「夏のビーチでは、これが基本だろうに」
無表情で何なんだこいつは。
「ウッヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!諫早さんの糜爛なクソどエロな色気に!こっちの皇女は清純なお色気でゲスあああああああああああああああああああああああ!堪んねえでゲス!バッチリ撮りてえけど心霊写真凄すぎるでゲスああああああああああああ!」
勝手に撮るとこうなるのよ。私達を。
まあ、こっちはこっちで赤いビキニ着たおかっぱ馬鹿眼鏡が興奮していたという。小鳥遊山椒が、不快な巨乳を晒していた。
向こうでは、ウェイトリー・猫が女達に群がられていた。
「全員集合しろ!猫!人間傾世元禳引っ込めろ!ライルはいいや、ババアの悪夢冷めやらじだ。状況の説明するぞ」
海パンに、白沙の羽織を引っ提げたおっさんが、箱根の死んだ坊主乗せそうなチェアに乗って現れた。
チェアの隅に起立した、三田村さんが大きな日傘をさしていた。
背後に、夏バテ気味の雪女郎が冷風を送っていて、まあ、変に快適そうだった。
このおっさん、寒いとすぐに死ぬって課長が言ってたけど、暑いと大丈夫なの?
「最近、漁船や海洋船舶が、立て続けに巨大な海棲生物に衝突するケースが起きている。まあ普通はクジラや氷山なんだが、相模湾にそれはあり得ないというのが、祓魔課の出した結論だ。即ち霊災だ。始末してこい」
極めて雑な指令が降りてきた。
「霊視班によると、沖30キロ圏内に何かいるっぽい。じゃあ斬獲な?」
「胡乱にもほどがあるんだけど。大体、何で、私達水着着てるんです?」
「あん?そんなの、俺が真琴のマイクロビキニ見たかったからに決まっとろうが。陸の上はもう俺のフィールドだからなあ。羅吽如きじゃ手が出せんと思ったのかも知れん。日本は海洋国家だ。海洋通商を潰されると、俺なんかがまあ困る。太平洋戦争の二の轍を踏む訳にもいかん。さっさと行け。行ってこい。俺は真琴とビーチでイチャイチャしてるから。緑は、託児して来たんだよな?」
「ええ。トキさんに預けてきました。何故か大人しく、うっきゃあして抱いてましたよ?碧ちゃんなんか、緑君がいると聞いたもんで学校早退してうっきゃあしてますし。要するに、緑くん1人で全員がうっきゃあしていると言った塩梅です。5人目はすぐ作れまちゅ♡海の霊災より降魔さんのオス蛇ちゃんの方が♡どうイチャイチャするのか早く知りたいのでちゅ♡」
もうトロトロ嫁になっていた。
「うん♡濃密な奴で行こうな♡船に乗って行けお前等。貸しやるから」
オンボロな漁船が一艘、海岸沿いを並走していた。
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