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3月31日 曇り
*
僕・西ヶ谷希晴は、普通の高校生だ。
否、正確に言うと僕はかなり存在感の薄い人間である。昔からそうだった。
高校デビューだなんだと言い、周りが派手な身なりをするようになっても相も変わらず黒髪・眼鏡を貫いており、教室では大抵一人で読書。
友だちはいるが、特に一緒に行動したり遊んだりするわけでもなく。皆んなが言うところの、所謂「隠キャ」というやつになるのだろうか。
―――まあ。
僕はそんな肩書き、どうだっていいが。
群れるよりも1人でいた方が楽だ。人前に立つのも得意じゃないし。どうでもいいような些細な事で、誰かと一緒に寄って集って騒ぎ立てるのも……あまり好きじゃないから。
良く言えば、それなりにゆるゆる伸び伸びと高校生活を満喫していた(「クラスの仲間と仲良くしなさい」なんてクサい事言う先生もいないしね)。
そして毎日をずるずると過ごすうちに、いつの間にか次のステップへと上る季節が目前に迫ってきている。
つまり、僕はもうすぐ高校2年生になるのだ。
「え、ハルくん? どうしたの、急に」
千思万考する僕の正面で1人の女の子が首を傾けた。その仕草に伴い、肩から綺麗な長髪がさらさらと零れ落ちる。
少しの戸惑いが含まれた瞳と垂れ下がった眉に、やはり彼女には笑顔の方が似合うな、ということを再認識させられた。
『明日、晴れるんだってさ』
―――数秒前。
そんな意味不明なことを言って、彼女をこんな表情にさせたのは紛れもなく僕自身だというのに。
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