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心の雫
*
『明日は、晴れるよ』
ああは言ってみたが、生憎明日が晴れるなんて保証、僕には1ミリだってなかった。
なのに、かなり自信満々に言ってしまった。
明日晴れてほしいっていうのは、多分僕の単なる自己満的な願望に過ぎないのだろう。
でも、東坂さんが明日を涙で終わらせてしまわないように、僕は何とかしたかった。だから今年こそは、と思い切って口を開いた。
それなのに―――。
出てきた言葉が「明日は晴れ」だとか、不器用にも程があるだろう。
それだけならまだしも「信じて」なんて付け加えてしまったのだから、救いようがない。
―――明日、晴れるといいなあ……。
虚ろな気分で3月31日の曇り空を見上げ、口からは重い溜め息が零れ落ちていった。
世間的に言えば「幼馴染」である僕と東坂さん。でも僕は彼女を幼馴染だと周りに公言することは愚か、自身の中でも友だちですらない……と思っている。
それくらい、僕たちの関係は曖昧で不確定なものであった。
東坂さんとの出会いは、忘れもしない小学3年生の頃。
新学年へ上がると同時に僕のいたクラスへ転入生としてやって来た東坂さん。当時も今と変わらず、明るくて笑顔の絶えない女の子だった。
当然そんな彼女の周りには自然と人が集まってくるわけで、転入から僅か1週間程経った時には既にクラスの人気者へとのし上がっていた。その様子に僕は感心する。
内気な自分とは全くタイプの異なる女の子。
関わることなんて一生ないと思っていた。
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