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「あ、そうだ! 今日エイプリルフールじゃんね」
「あたしは朝弟に嘘付いたー」
「へー。なんかお前の嘘って直ぐ見破れそう」
「あはっ、分かる〜」
「は? うざ!
じゃああんたらはどんな嘘付いたのよっ」
「俺は…―――」
―――見つけた。
無心で箒を動かしながら、僕の視線は無意識に東坂さんを探していたらしい。他よりも少し、大規模な集団の中に彼女の姿を発見した。しかし、いつもと様子が違うよう感じる。
まあ、今日こそが昔彼女が言った「大切な人」の命日なのだから、当たり前か。
他人の前で弱みを見せることを嫌がる彼女らしくない、沈んだ後ろ姿。僕は手を動かしながらさり気なく、視界に東坂さんの表情が映る位置へと移動した。
「そうだ、心雫は何かしたっ?」
隣の女子が東坂さんへ話を振るが、彼女は答えない。心做しか顔色が悪いようにも見える。元々色白な顔が、より一層血の気を失くし青白くなっていた。
「おーい、心雫?」
「なにー。え、まさかエイプリルフール?」
「うわ、何か企んでんのか」
東坂さんの変化に少しも気付いていないのか、彼らはその場をニヤニヤ顔で囃し立て始める。その話し方・態度に少しイラッとする。
―――そして、
僕は「エイプリルフール」という単語に、東坂さんの肩がビクッと揺れたのを確りと確認した。何かを言おうとして開閉する口が微かに震えている。
「え、マジどしたん?」
「もしかして怒ってる……?」
「おいおい、そーいう嘘マジだりぃって」
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